dream ather
□背伸び
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「…あー、そか。ほな」
草薙は苦そうな顔をして受話器を置いたあと、盛大に溜息を吐いて片手を後頭部へとやった。
「敵?」
ちょこん、と可愛らしくソファに腰掛けている少女、アンナが草薙へと問い掛ける。
現在、バーHOMRAには草薙、アンナ、八田の三人がそれぞれ寛いでいた。
「この間の組の残党の動きが怪しいらしいんやて」
眉尻を下げながら言う草薙とは対照的に、八田はいかにもやる気に満ちている。
「俺に任せといてください!あんな奴ら、ちょちょいのチョイっすよ!」
握り締めた右拳を左手の平に叩きつけるようにして、八田は楽しげに口元を歪めてみせた。
アンナはするりとソファから降りながら、私も行く、とバー入口のほうへと歩く。
「あ?あぶねーだろ、アンナは留守番しとけって。迷子になったら困るしな」
その八田の発言に、お?と興味をそそられた様に草薙の眉が軽く持ち上がり、動向を見守るように視線を二人の間に向けられた。
アンナはあからさまにムッと顔を顰めている。
「ミサキ、子供扱いしないで。イズモ、行ってくる」
あらら、と困り顔を作って手を振ってアンナを送り出したあと、草薙は八田へと含みのある視線を向けた。
「ほな、頼んだで。八田ちゃん」
「うぃっす!」
そう返事をして入口の扉を八田が押して出ていき、バーの中にはカランカランと軽い鈴の音が残った。
遠くから八田のアンナを呼ぶ声が聞こえる。
草薙は一人取り残されたバーの中、カウンターに頬杖を付きながら苦笑するように微笑んでいた。