dream ather

□青峰くんとマジバ
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ギィ、
という屋上の扉が開く音が聞こえた。
そのあとすぐ、ゆっくりと扉が閉まる音が聞こえたから、さつきでも来たのかと貯水タンクの上から屋上の入口付近へと視線をやった。
その人影は、さつきと同様女子生徒ではあったが、知らないヤツだ。
俺はどうせ下からは見えないが、なんとなく居心地が悪くなって貯水タンクの上でそいつに背中を向けるように寝転がった。

はやくどっか行ってくれねえかな

なんとなく、いろんなものが面倒くさくなって思考を断ち切ろうと睡眠の姿勢へ入る。
そろそろ寝付けそうだ、ってときに食べ物のいい匂いがしてきた。
心の中で小さく舌打ちをして下に目を向ければ、さっき入ってきた女子生徒が扉の近くでハンバーガーを食べていた。

こいつはもう寝付けそうにないな

そう判断した青峰は気怠げに起き上がって、欠伸をしながら頭をボリボリと掻いた。
貯水タンクから降りて屋上を横切るとき、彼女と目が合った。
物珍しいヤツだな、と思って俺がジロジロ見ていたのもあるが、彼女の方もこちらを凝視していた。
もぐもぐと口の中に詰め込んだハンバーガーを咀嚼しながらも、じっとこちらを見てくる。
匂いがより一層近くなって、同時に扉にも近付いてきた。
旨そうな匂いだな、なんて脳裏を過ぎったのとほぼ同時に、豪快な腹の音が鳴り響いた。
ほんの少し居た堪れなくて腹に手を当てて摩った。
ほんの少し気恥ずかしくて彼女から視線を逸らした。
出入り口までもう少しだ。

「あの、」

控えめな声でおずおずと発せられた言葉。
女子生徒のものだ。
ちらり、と女子生徒の方へ視線を向ける。

「食べますか?」

「あ?」

えっと、などと言いながら彼女はマジバのものだろう紙袋を漁り、ハンバーガーを俺に向かって翳す。

「ひとつ余ってるので、良かったら」

そう言って真っ直ぐに見てくるのだ。









どきどきしながら彼の返答を待つ。
邪険にされるかな、と小さな不安を抱いていたのだが、思いの外彼は砕けた雰囲気で話しかけてくれた。

「お、いいのか?」

小さく、はい、と返事をしてずい、とハンバーガーを前に出す。
私に近付いて、サンキュ、なんて言いながらハンバーガーを受け取った青峰くんはそのまま私の近くに腰を下ろした。
青峰くんがハンバーガーの包装を解いたのを見て、ここで食べるんだなと判断して私もハンバーガーの続きを食べる。
もぐもぐ、もそもそ
ハンバーガーを食べる音、包装紙の擦れる音がやけに大きく聞こえた。

「青峰くん、よくここに来てるんですか?」

「おう」

何か話さなくちゃ、と思って紡いだ会話は呆気なく終了した。
めげずにまた話しかける。

「私、青峰くんのファンなんですよ。試合とかよく見に行かせてもらってます。帝光中だったんですけど、友達に誘われて」

ふーん、とあまり興味なさそうに青峰くんは鼻を鳴らした。
もぐもぐと咀嚼していたものを飲み込んで喋る。

「黄瀬じゃねぇんだな」

「ああ、黄瀬くんはすごい女の子にモテますよね。私の友達も黄瀬くん目当てでした」

話がズレかかるのを青峰くんは視線で牽制する。
ああ、私がなんで黄瀬くんじゃなくて青峰くんのファンなのか、だったっけ。

「なんか、青峰くんのプレイスタイルは見ていて飽きない、といいますか。試合中何度も驚かされるんですよね。今度はどんな風にゴールを決めるのかな、とか、どうやって相手を抜くのかな、とか」

語っているうちに試合を思い出したのか、彼女は興奮気味に話す。
バスケの試合を見に来る女なんか色恋目当てのヤツらばかりだと思っていたが、こいつからは全くそういうものを感じなかった。

バスケが好きなんだな

そう思った。

なんだか久しぶりに気分がいい。

「見にくるか?」

ほんの出来心で言ったひとことに、いいリアクションを返してくれる。

そんなに驚かなくてもいいだろ。
そんなに喜ぶほどのことでもねえだろ。

そう思いながらも、彼女の表情に、言葉に、態度に、嬉しくなってしまうのだ。










試合はできないけど、ミニゲームくらいなら誰か付き合わせりゃいいだろ

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