眼光紙背 深き闇の魂

□一章 知者楽水
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皇毅はため息をついた。
「男に訊けど、未だそれだけか。
御史台も、ずいぶん落ちぶれたものだな。
…まぁ、いい。明日以降、私自ら現地で調査を行う。これ以上、長引かせる訳にもいかないのでな。

…では、明日に備え、資料をそろえておけ。明日朝すぐ出立だ。いいな。」

「はい。申し訳ございません。では…」

清雅は一言謝り一礼すると、踵を返し、御史大夫室を後にした。







皇毅は、規則的な足音が御史大夫室から遠ざかっていったのを見計らってため息をこぼした。

「晏樹。貴様、いつからそこにいた。」

「えっと、皇毅が清雅に例の件の報告をしろ、って言ってたトコからかな。」

皇毅はもう一度、盛大なため息をついた。

「人の話を盗み聞きするのも大概にしろ。
…で、貴様、何しにここへ来た。
まさか、別に何をしに此処へ来たわけでもない、などと言うのではないだろうな。」

「違うよ。皇毅。
例の件について、ちょっと知ってることがあってね。」

形のよい唇を笑ませ、扉に寄っかかる男は言った。

「でも、ただじゃ教えない。条件付きでっていうなら教えてあげる。」

皇毅は呆れ顔で言い放った。

「勝手にしろ。」


すると、晏樹は瞳に楽しげな色がひらめき、言った。


「実はその子、今日中に、この城に来るよ。」






















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