絶望の海の光
□2話
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「ユーリル、危ないから下がってて!」
「…………」
なんだろう、すごく情けない。
さっきからジャンヌは、襲いかかってくる魔物から俺を守るように戦っている。
その間、俺はジャンヌの強さに手だしすることも出来ずにその戦う姿をただ見ていた。
「ジャンヌ、俺も戦うよ。
認めたくないけど…一応勇者なんだし…」
「で、でも…危ないよ。」
「俺、剣術ならやってたから大丈夫だよ。」
ジャンヌにばかり任せてられない。その意志を伝えると、ジャンヌはふんわりと笑った。
「そうだね。あまり私が、勇者様の役割を取っちゃいけないよね。」
ジャンヌはそう言うと、俺の後ろに下がった。
俺の目の前には魔物。
俺は剣術の訓練の時に使っていた剣を握り直した。
「ふっ!」
訓練の時のように強く振るうと、与えられた手応え。
どうやらとらえたらしい。
俺の攻撃を受けると、すぐに魔物は倒れた。
ちらりとジャンヌの方を見れば、驚いている目と合った。
「ユーリル…
すごい、すごいよ!」
「そうかな…?」
「私、びっくりした!
ユーリルって強いんだね!」
にこにこと笑って俺を褒めるジャンヌ。
そんなジャンヌを見ていたら、勇者として、なんて考えてしまった。
「俺、自分の故郷すら守れなかったのに…勇者として戦ってもいいのかな…」
自分でも、何を聞いてるんだと思った。そんなこと、ジャンヌは関係ないし、俺の意志が弱いだけの話だというのに。
「私は、勇者として戦うのは、ユーリルにしか出来ないことだと思うよ。」
でも、そう言ってジャンヌは、もう一度ふんわりと笑った。
その笑顔に、俺は心にふたをされたような気持ちになった。
「ジャンヌって…不思議だね。」
「え?」
「俺のこと、安心させてくれる気がするよ。」
会ったばかりなのに、どうしてこんな気持ちになるのかはわからないけど、ほら、そうやって俺を不思議な気持ちにさせる笑顔をまたひとつ、咲かせている。