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□紙飛行機
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夏の暑い時期が過ぎて、葉が紅く染まり出す頃、沙夜は一人放課後の教室からぼうっと、外を見て一人のことを考えていた。
「はぁ、……?」
ため息をついて閉じていた両目を開けると 突然、窓から小さな紙飛行機が入ってきた。
「いったいだれが…」
沙夜はその紙飛行機を手に取り、ゆっくり開いた。
なんとなく悪い気はしたが、元々こういう不思議な事は、気になってうずうずしてくる性分だったのだ。
結局、開いてみると小さく紙の真ん中に、『理科室の一番前の机』と書かれていた。
どうせ暇だったし、元から行く気満々だったので、特に迷うことなく椅子から立ち、理科室に向かう。
理科室につくと、机の上には同じように折られた紙飛行機と、一冊のノートがあった。
表にしてみると、それは自分のノートだった。
「理科のノート忘れてたんだ…」
自分でも気付いていなかったことはさておき、いったいこの紙飛行機は誰が折っているんだろう…?
考えながらも唯一の手がかりである二つ目の紙飛行機を開くと今度は『屋上』と書かれていた。
屋上に向かう途中、教室で考えていた一人のこと、同じクラスの鬼崎拓磨君のことを考えていた。
クラスでは、他の人よりも話す事はなく、一人で静かにしているため、話しかけることができないのだ。
だけど、最近転校してきた春日珠紀さんとは、お昼休みになると二人で仲良く食べにいっているのを見かけた。
その時に、鬼崎君は春日さんが好きなんだな、ってわかった。
一年間の私の恋は散ったのだ。
「せめて、伝えたかったな、」
?「何をだ?」
「っ!?」
突然声を掛けられて、驚いて顔をあげると屋上には、たった今考えていた人がいた。
「お、鬼崎君!?どうしたの、こんなところで」
拓「そんなに驚く事か?
……昼寝してたんだよ」
「そうだったんだ。でももう皆帰っちゃったよ?」
拓「すげぇ、寝過ごしたみたいだな」
「それに、」
拓「あ?」
そこで、一瞬躊躇って口を再び開く
「春日さん帰っちゃったんじゃない?
」
帰るとき、この前二人で帰っているのをたまたま見つけたのだ。
自分の発した言葉に胸が痛くなる。
拓「…何で珠紀なんだ?」
「…よく一緒にいるでしょう?
この前は一緒に帰ってたしさ。
ところでさ、」
少し早口で言って話題を変える。
「ここに紙飛行機なかった?」
拓「……あるぜ」
三つ目の紙飛行機は鬼崎君の手の中にあった。
「やっぱり」
鬼崎君に頼んで渡してもらうと、沙夜は早速開いた。
中には…