短編小説

□◎オオカミと少女―思惑と勘違い―
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 僕にはピンととがった耳がある。

 僕には大きく割けた口がある。

 僕には鋭い牙がある。

 みんなは僕を「化け物だ」と言う。




 僕だって生きている。

 生きていればお腹がすく。

 木の実じゃあお腹を満たせないから、

 仕方なく誰かを襲ってしまう。




 "ヒト"だって動物を推そうクセに

 1匹の動物をみんなで追い詰めて

 いじめる卑怯な真似するクセして

 僕の事をいじめるんだ

 


 赤い頭巾のあの子とは

 仲良くしたいと思っただけ

 なのにあの子はこう言った


「化け物、近寄らないで」


 頭にきて、悔しくて

 涙を流しながら

 あの子をお腹に詰め込めた




 やがて僕は泣き疲れて

 グッスリ眠ってしまってて、

 一口お水を飲もうかと

 湖に少し屈んだら

 お腹がガラガラ鳴りだして

 湖の底へと誘った

 せめて最後に言いたかった

「わざと襲ったんじゃないんだよ」

「脅かすつもりはなかったんだ」

 真実は闇に潜んだまま

 人々は今日も口にする




「オオカミはいけない動物です」

「あんなふうになっては駄目よ」




 話を聞こうとすることなく

 思い込みで悪役扱い

 本当に悪いのは誰だろう?

 本当に悪いのは…


 ブクブクブク…

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