短編小説

□◎ねずみ と 人間
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ねずみは言った。

「俺の友達は人間が作った食べ物を喰った。」

「そして死んだ。」

「普段、人間が食っているものと同じだった。」

「それでも死んだ。」

「ヤツらは今も元気に生きているのに。」

「それは何故?」

「ヤツらはきっとこう考えたに違いない。」

「それは何を?」

「食糧を喰い荒らすねずみを倒してやろうと。」

「そしてどうした?」

「ヤツらは盛った。食糧に、ねずみを殺す毒を。」

「…許さない。」

「ヤツらは俺たちが暮らした自然を奪った。」

「それなのに。」

「俺らがヤツらから奪うことを、ヤツらは許さない。」

「ヤツらはきっと」

「俺達の存在が許せないのだろう。」

「だけど、」

「俺の命だって一つの命だというのに。」

「体は違えど」

「命の重さは、尊さは変わらないというのに。」

「なのに。」

「俺らが生きることを、ヤツらは許さない。」



本当に悪いのは誰?

毒を盛られたねずみだろうか?

毒を盛った、人間だろうか?

人間の物に手を出したねずみだろうか?

自然を奪っていった、人間だろうか?

私には、分からない。

ねずみにも、きっと分からない。

みんなきっと分からない。


みんな、自分が生きる事で精一杯だから。


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