過去から未来へ舞う翼
□第二章
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16年前の12月1日
「…ふぅ。今日も一日無事に終わったのう」
今日も迷える子羊は少なかったのう
悩んでいる人が少ないことは神父にとっていいことじゃ
「……ん?」
何やら教会の前に籠がおいてあるようだ
「全く。お礼をする場合は直接渡せばよいものを。最近の奴は恥ずかしがり屋ばかりで嫌になるわい」
わしは、籠の中を覗き込んだ
「………え?」
籠の中には…
『スゥスゥスゥ』
まだ生まれて一か月くらいの赤ん坊がすやすや寝ていた
「赤ん坊のプレゼントは受け付けていないのじゃが…」
とは言っても、それを聞いてくれる人などいない
「仕方ない。このままにしておくわけにもいかんし、連れて帰るか」
自宅に帰り、ほかに何もないか調べてみると手紙が同封されていた
手紙には[この子を幸せにしてあげてください。名前はまだありませんのでいい名前を付けてあげたください]と書かれていた
「(どうするかのう……)」
普通は警察に届けるのが当たり前なんじゃが…
『すやすやすや』
「何というか、この子を放っておけないんじゃよなぁ……」
不思議な感じのする子じゃ。
もしかしたら、いいとこの子どもかもしれんな
「……覚悟を決めるか」
この子はワシが育てよう
前にも捨て子を育てたことがあるし、なによりこの子は大物になる気がするしな
「聖職者として、ワシが正しい道を歩ませてあげなきゃな」
将来、自分が捨て子だと知っても真っ直ぐ歩めるように……
「おっと!そうと決まれば、この子の名前を決めなきゃならんな」
さて、何て名前を付けるべきか……
「名前はその人の運命を決めるともいわれておるし、迂闊な名前は付けられんのう」
と、そんなことをかんがえていると……
ドサッ
「あちゃ〜。本が落ちてしもうたわい」
ワシは、落ちた本を手に取った
「ん?この本は………」
確か、前に育てた子がよく読んでいた本じゃったな
「new World〜真実の翼〜か」
確か、少年ヂューク=西郷が殺し屋を撃退するために羽を手に入れる冒険に出る話じゃったな
「…よし決めた!この子の名は翼じゃ」
ヂュークはともかく、この子にはこの広い世界を見てほしい。
そして世界へ羽ばたいてほしい
「翼なくして世界は見渡せんからな」
頑張るのじゃぞ、北條翼……
『これが、親父から聞かされた俺の過去だ。ちなみに親父は一年前に病で死んでる。あと、小学校と中学校は卒業済み。ちなみに親父が死んだ後、教会が親父の親戚の人に所有権が移ったのをきっかけに俺は家を出だ。そして、三千院家に救われた。それが俺の経緯ってわけ』
まあ、ちょっと波乱万丈な人生な気がするが、まだまだきつい生活をしている人は他にもいるだろう
「「「・・・・・・・・・」」」
『ん?どうかした?』
「い、いや、お前も随分凄い生活を送ってたんだな。正直意外だ」
『そうですか?これくらいちょっとした苦学生レベルだと思いますよ?』
「いやいや。どう見ても苦学生レベルじゃないだろ」
「そうですよ翼君。明らかに普通の人間の生活じゃありませんよ」
「(周りの人間に話したら、かなり不幸な人間だと確実に思われそうですね)」
ナギ、ハヤテ、マリアは、翼の生活に驚きと哀れみを感じていた
『そんなものかな?まあ、確かに多少苦しいとは思ったけど、今はここに仕えていますし、終わりよければ全てよしですよ♪』
「随分前向きだなオイ」
『親父の教えですよ♪さて、じゃあ俺は後片付けします』
」
そして、俺は台所に向かって行った
残された3人はと言うと・・・
「・・・何か不思議な奴だな」
「そうですね。でも、悪い人じゃないってことだけはわかります」
「そうですね。彼の顔には嘘偽りが感じられませんでしたしね」
「ただ、あいつ。ちゃんと馴染んでくれるといいんだが・・・」
「大丈夫ですよお嬢様。翼君ならきっと・・・」
「そうですわよナギ。まだ彼のことをよく知らないのはわかりますが、彼のやる気を信じましょう」
「・・・そうだな」
しかしあいつ。
何かまだ隠しているような気がするな
「(ま、今は気にしなくていいか。それより今はハヤテと・・・)」
【さて、次は一気に大晦日に突入します♪】
「ってオイ!私のセリフを最後まで言わせろ!」