●白日夢●
□ビューティフルデイズ
1ページ/1ページ
「あなたの脳の中身が知りたいの」
ノートパソコンに向かう僕の背後から忍び寄る、細い指は冷たくこめかみに触れた。
集中していた振りで実際呆けていた僕はびくりとし、大袈裟に椅子を揺らした。
いつもの君の悪戯だ。
「こうしている間にもあなたの頭の中では何かが起こってる。
きっと、そう」
変な方向に癖の付いた僕の髪を摘んで弄ぶ。
君はいつもおかしなことを言っては僕を悩ませるけれど、僕はきっとそれを待ち望んでいるのだから。
たちが悪い。
「至って普通の脳でございます」
「そうかしら…」
君の気配に頭を預けた僕は、悪ふざけに便乗したくなった。
「何しろ精密な仕様に作られておりますので。」
「やっぱり、人工物だったのね」
あなたはマネキンに似てるもの…
クスクスと笑いが頬を掠めた。
「ここだけの話。
僕の首の後ろには制御スイッチがあるのだよ」
「まぁ、すてき」
思惑どおり君は僕の襟足に触れてくれる。
このまま振り向いて、
キスしようか。
『カチッ』
味気ないプラスチック音
そして
僕の思考はフリーズした。
.