●白日夢●

□IN MY DREAM
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『下界』には決して降りてはいけない。
この翼は地上に住む者にとっては非常に価値のある物だった。
昔から不老不死の効果があるのだと信じられていて、
翼を持たない『人間』は、
それを求めて、止まないのだから。

だから降りてはならなかったのに――


やっとの思いで『下界』から『空』へ逃げ帰った時には、すでに『ユウ』の翼は飛ぶことさえ出来ないほどに傷ついていた。
白くて美しい翼の面影は、今は何処にもない。
私が辛うじて難を逃れたのは、追って来る『人間』達から身を挺して庇ってくれた『ユウ』のお陰だった。
しかし反面、彼は多分にダメージを受けてしまったのだ…
泣いてすがる私に『空の長』は歩み寄り、厳かに言った。

「翼を失った者には、『空』に住む資格はない」

私はそのまま『ユウ』と引き離され、気がついた時には『ユウ』は消えていた。
飛べない者がこの場所に居ることは許されない。

彼は――『下界』に送られたのだ。


私は一人、『空の果て』に佇んでいた。
見つめていた――
あの日のように。
雲は音もなく流れて行くのに、
風は変わらず舞っているのに、
『ユウ』はもう、此処には居ない。
この『空』の何処を探しても、見つからない。
だからもう、こんな翼はいらない。
『ユウ』の居ない世界を繋ぎ留めておくだけの翼なら、私には必要ない。


そして私は、翼を捨てた。
地上のどこかに居る、『ユウ』を求めて、
再び出逢えることを信じて、
未知の世界へと、飛び立った――




Fin.
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