●恋詠小品●
□センチメートル.
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まだひんやりした風に煽られた君の髪が踊る。
君は目を細めると、ほぇ と変な欠伸をして天を仰いだ。
ベンチに投げ出された手足。
その長さにうんざりするほど、隣に座った自分がコンパクトに思えた。
間の抜けがちな端正な顔をチラリと伺ったら、やっぱり腑抜け顔にも思えるし、
実は物凄く深い事を考えているようにも感じる。
「そんなに見つめられたらますます格好良くなっちゃうよー」
こちらを向かずに戯言を吐いたので、悔しいから25センチだけ離れてやった。
「離れたつもり?」
君の声が耳元に触れる。
容易く捕まるために、ちょっとだけ離れてみたことは内緒。
春風がなぜる、
ゼロセンチ。
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