頂き物・捧げ物(ノベル)

□ホントの気持ち
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そして六番隊隊舎前



「兄様。少し宜しいでしょうか?」

隊舎室の前に立ち、入室の許可を待つ


「ルキアか…入れ。」

「失礼します。」


部屋に入り義兄を見るルキア……いつもと変わりないように見えた


「恋次は何処へ行ったか知らぬか?」

「あやつは……すぐに帰ってくるでしょう。」
「そうか」

そう、恋次はここへ来るまでの間に死ぬ気で逃げ出していた
(あのヘタレ犬がっ!byルキア)



「あの、兄様…」
「何だ?」

筆を置きもせず、無駄のない流れでどんどん書類を仕上げる白哉


「……何かあったのですか?」

と、いきなり話を切り出したルキア
そして一瞬ではあるが筆の動きが止まった白哉

しかしルキアは気付かなかった
白哉も、何も無かったかのように再び筆を滑らせる

「別段何もない…」
「そうですか………」
「あぁ……」




部屋に訪れた重苦しい沈黙に耐え切れず、ルキアは言葉を続けた


「そっそういえば、一護来ませんね。今日はあっち(現世)で何も用事は無いって言っていたのに。」

『一護』と言った瞬間、少し空気が変わった


「あやつなら、昼頃来ていた…」


「そうなんですか?」
「あぁ。すぐに帰ったがな。」
と、どこか何かを押さえ込むように言葉を紡いだ白哉


「そうですか。でも、一護が休日に兄様の側に居ないのは珍しいですね?何か急用でも…?」


今度はとうとう完全に筆を置いて話した
…ルキアの方は決して振り向かないままで――

「あやつが此処へ来ることはもう無いであろう。」
「え?何故ですか?」
「あやつが昼来た時、別れを告げてきたからな。」

そう言って拳を握る白哉


「そんなはず…っ!何かの間違いです!」
「あやつ本人から言われたことだ。間違いなはず無かろう。」
「しかし一護は…」
「くどい!!金輪際その名を私の前で口にすることは許さん!」


何にも動じることの無い白哉が声を荒げた
だからこそルキアは何も言えなくなってしまった

「…話は終わりだ。早く執務に戻れ。」


再び筆を持ち、拒否を表す義兄に、ルキアは引くしか出来なかった



そして六番隊隊舎を出たルキアの目の前に現れた恋次

「よぅ。…どうだった?原因は分かったのか?」
「それが……」
「何だよ、どうしたんだ?原因は一護だったってか?」

恋次の問いに首を縦に振るルキア

「やっぱかよ〜痴話喧嘩か?やめてほしいぜ。」
「………」

冗談を言う恋次だったが、俯いてしまったルキアを訝し気に見遣った

「おぃ…ルキア?」
「…一護が兄様に別れを告げたそうだ……」

思いもしなかったルキアの言葉に恋次は目を見開いた

「何だと!?そんな…!どうしていきなり!?」
「私にもさっぱり分からぬ。二日前に会った時にはそんな様子もなかったのだが…」

しばらく沈黙を経て――


「私はこれから現世へ、一護に会って話を聞いてくる。こんなこと…とうてい納得出来ぬ…!」


そう言って地獄蝶と共に消えたルキア
そして―――


「……って、余計空気悪いじゃねえか――ッ!」

気付きたくも無かった事実に気付いてしまった恋次


―と、ふいに隊舎の戸が開き……

「…貴様…仕事を放棄して勝手に出歩くは、隊舎前で叫ぶは……覚悟は良かろうな…?」

と鬼の形相よろしくの兄様が……

「えっ、いや…あの……っ」
「問答無用……散れ、千本桜――」
「ぎゃぁぁぁ―――」


…憐れ、恋次――
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