頂き物・捧げ物(ノベル)

□ワンダフル・イフ
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みっともない声を上げて腰を抜かす同僚には一瞥も向けず、小柄な神父が大型の銃を突き付ける。
「おや、無粋な機械人形じゃないかァ、ぼかああんまり好きじゃないよ。なんていってもお前の傍につかず離れずボクの可愛い弟が…「ネガティヴ、俺は機械化歩兵だがナイトロード神父とは一定以上の関係にはない」
滔滔と語る、金髪の青年をまるで無視したような遮り方でマシナリーの神父は言い放った。
「あはは巧いですねえトレス君、一定以上の関係があったら大変ですよねえ…あ、何はともあれありがとうございます!トレス君、よく銃を向ける相手がドンピシャで分かりましたねぇ!!」
グッジョブ!と親指を突き出して若干復活しかけていたアベルは同僚を神のように褒め称えた。
「…ポジティヴ、彼から何か理解不能な感情の奔流を感じた。」
「あらあら、とうとう機械に検知されるほどの、歪んだ情愛を垂れ流してらっしゃたのね」
「ははん、君には言われたくないよリリス…僕は知ってるんだよ?千年前の行状を!…他の人間に目を向けさせないためにわざと孤立するように仕向けたりしていたことも全て御見通しさ」
「…へ」
ピシイ、と、アベルの顔が硬直する。
聞いてはいけないことを、耳にしたような、気がした。
「あああらアベル、何でもないのよ。何をいってるのかしらねえふふふふ」
「往生際が悪いんじゃないかなフフフフ」
「…ナイトロード神父、並びにツァラメトセルート、アウグスタにこの空間からの離脱を推奨する。」
神父が再度銃を構えなおし、淡々と告げた次の瞬間。

ドオオオオオオン

轟音の後の一瞬の空白に、妹に抱えられアベルは空を飛んだ…気がした。
「ギャアアアア!!!!!」
「煩いよアベル兄さん!!それに普通叫ぶのは女の子のボクだろ!!」
「…殲滅、完了」
「してないとは思うけど、まあこれで一時間は出てこないだろうね。お疲れ様、トレス=イクス神父」
「アウグスタ・ヴラディカ。何の目的でここへ来たのか、回答の入力を要求する」
「んー…こっちもさっきから訊きたいんだけど、何で知ってるの」
笑いながらも、窺うような仕草で言い返しセスは相手の目を見据える。
ガラスのような茶色い瞳が無関心に返される。
「……遺伝子設計図…いわゆる“神の設計図”がナイトロード神父と大多数、一致。さらに過去の情報を総合し判断した。違う場合は早急に訂正を、ならびに先ほどの回答の入力を要求する。場合によっては、殲滅に移行する。」
「や、あってるけど。…そっか。さすがに千年たてばニンゲンも進化するよね…目的は、この現象の真偽を確かめるため。…メトセラもやはり、復活しているようでね。」
少女の姿とは不釣合いなほど、静かな声で状況説明をするセスに一応納得したのかトレスも銃を下ろした。
「…ミラノ公のもとへ案内する」
背を向けた小柄な神父に、若干目を見張りセスは尋ねる。
「…そりゃ…どうも…。いいの?そんなに簡単で」
「いいんですよ〜保護者の私がいるんですから」
「兄さん…兄さんは保護されるほうだと思うよ」
「…う」
「泣かないの、ほら」
涙目の兄の手をひいてやりながらセスは、神父のあとを追った。
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