頂き物・捧げ物(ノベル)

□ワンダフル・イフ
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「ギャー!?ゆゆゆゆ幽霊ッ!?」
フーッと、毛を逆立てた猫のような反応の妹を目に入れてやっとアベルもすっきりはっきり目が覚める。
「ーーーーー!?本当に!?本当にリリスなのか!?そんな馬鹿な…!!」
「あらあら、可愛らしい反応だこと。…あなたも久しぶりね…セス」
「…リリス、ほんとに…」
「貴女は知っているのでしょう?」
「うん、そう……そうなんだ。…兄さん、死んだ人がどんどん生き返ってる。リリスもそのひとりなんだね?」
「ええ、そう。それにね…」
「アベル〜!!」
部屋の扉を蹴破るようにして走ってきたのは、金髪のアベル。
ではなく
「か…カイン…!!」
全く同じ遺伝子地図を元に作成された、双子のように近しい、兄。
しかしながら、彼はバチルスを取り込んだそのときから…
否、或いは最初からそうだったのかもしれない…かつて、世界を敵に回したアベル以上にカインは自分たちを作り出した人間を憎んでいた。
それゆえに敵対することとなった、姉のような存在であるリリスを屠りアベルに生身で大気圏突入をさせられた過去は、たとえ千年のときを超えても一切褪せることはなかった。
「ああっ相変わらずボクそっくりじゃないかあ〜お肌も全然老化してないねえ。お兄ちゃんは嬉しいよォ」
「「…触らないで(くれる・いただけ)ますか?」」
女性陣の思わぬ―かどうかは定かではないが―妨害にあい、普段なら弟以外にさして興味も無いのに、赤毛の女性に目を向けることになった。
「…へええ、復活おめでとうお互いに」
リリスを見下ろすように、急に尊大な態度になって腕を組むカイン。
対する褐色の女神ことリリスも口元にそろえた指先をあててにっこりと惜しげもなく笑顔を作る。
「あらあら、折角肉体は治ったのにオツムはちっとも進歩していませんのね」
「君こそ、首は繋がったようだけどまだ脳に酸素がいってないんじゃないかなァ。そういえば脳って10分も酸素いかないと大変なことになるんだってね、大丈夫かい?」
「ふふふ、口だけはお達者で安心しましたわ」
無益な応酬を見ながら黙って布団で壁を作ろうとするアベルの代わりに、妹であり唯一の常識人であるセスが二人の間に割ってはいる。
「はいはいはい。兄さんもリリスも、アベル兄さんの前でみっともないことはよしなよ…ほら、逃げられちゃうよ」
実は今のうちに窓から脱出しようとしていたアベルの方をはっと振り返ったリリスとカインは驚くべき速さでアベルの前に回りこんだ。
「いやだなあ、どこに行こうっていうんだいマイブラザー」
「…私をおいていったりは、しませんね、アベル」
「し、仕事がー…」
小さな声で控えめに主張された言葉に二人の“神”が微笑みで応じた。
「それどころじゃないんじゃないかな」
「そうですよアベル、だからお寝坊でも大丈夫だったんでしょう」
「…」
閉口するしかない、そう思った矢先。

ずぎゃああああああああああっ
ありえない音を立てて、木製のそれなりに頑丈な扉が吹っ飛んだ。
それはもう、部屋の中のものが爆風で飛んでしまうくらいの威力。
「ひいおっひいいいいいいいいいい!?」
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