頂き物・捧げ物(ノベル)
□あなたの優しさ
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『あなたの優しさ』
「君はもっと楽な生き方をしてもいいと思うのだよ。」
「…はい?」
夜も更け、辺りが静寂に包まれた頃のこと
何を話すでもなく、二人でアルコールを黙々と酌み交わし、その心地よい沈黙に身を委ねていると、呟く様にウィリアムが話し出した
「いや、前々から思っていたのだよ。一体君はいつまで罪を償い続ける気か?――とね。」
軽い調子で吐き出された言葉は、決して触れてほしくない話だった
ついさっきまで心地よいと思っていた静けさが、今は重くのしかかってくるように感じた――
「さぁ〜、どうなんでしょうね〜?」
いつもの様におどけた調子で答えた
顔が歪む事なく、いつも通りの表情であることを願いながら―……
しかし、心配は的中したようだった
「そんなに哀しそうな顔をしないでくれたまえよ。…元は、この様な場面で口にした私が悪いのだが…」
「……それで、どうしてそんな事を聞くのですか?」
「どうして――か…。ふむ…まぁ、率直に言うとだ、君はもう十分苦しんできたのだから、自分を許してあげてもよいのではないのかい?」
「自分を許す…ですか?」
いつしかアルコールは机の上に置かれていた
「そうだ。もう誰も君を責めたりはしないさ。」
「…違います。責めないんではなく、責められないんですよ。死んでしまったから…助けられなかったから…!」
叫ぶように吐き出した言葉が、二人しかいない部屋に、静かに響いた――
そして、暫く静寂が破られることはなかった