頂き物・捧げ物(ノベル)

□シロガネヒメ
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「姫様。第一夫人(ははぎみ)が、お呼びです。」

窓から下界を眺めていた銀髪の姫君が静かに頷き、ドレスを翻した。



「奥様、姫様が」
「お入りなさい」

緋色の豪奢なドレスに、金の巻き髪。
怜悧な美貌の女はこの姫の母であった。

「母上…」
「お寄り、銀姫(しろがねひめ)」
「はい」
静々と母の前に進み出て、膝を折る。
裾がふわりと広がった。
光沢のある白地に銀糸の縫い取りのあるドレスは、姫のためだけに仕立てられたもの。
対する緋色の貴婦人は、権威を象徴するかのような金色をところどころに取り入れたドレス。
「…お前もそろそろ、成人する頃です。いつまでも逃げつづけることを許すわけには参りません。」
頭上から語りかける母の声は、厳しさを帯びている。
「はい」
「銀姫」
「…はい」
「次の満月に、成人の儀を執り行う。良いですね」

銀の姫君には、断る権利などありはしなかった。
ただ、唇をきつく結んで頭を垂れた。
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