頂き物・捧げ物(ノベル)

□あなたの優しさ
1ページ/4ページ


  『あなたの優しさ』


「君はもっと楽な生き方をしてもいいと思うのだよ。」

「…はい?」



夜も更け、辺りが静寂に包まれた頃のこと

何を話すでもなく、二人でアルコールを黙々と酌み交わし、その心地よい沈黙に身を委ねていると、呟く様にウィリアムが話し出した

「いや、前々から思っていたのだよ。一体君はいつまで罪を償い続ける気か?――とね。」

軽い調子で吐き出された言葉は、決して触れてほしくない話だった


ついさっきまで心地よいと思っていた静けさが、今は重くのしかかってくるように感じた――


「さぁ〜、どうなんでしょうね〜?」

いつもの様におどけた調子で答えた
顔が歪む事なく、いつも通りの表情であることを願いながら―……


しかし、心配は的中したようだった

「そんなに哀しそうな顔をしないでくれたまえよ。…元は、この様な場面で口にした私が悪いのだが…」

「……それで、どうしてそんな事を聞くのですか?」


「どうして――か…。ふむ…まぁ、率直に言うとだ、君はもう十分苦しんできたのだから、自分を許してあげてもよいのではないのかい?」

「自分を許す…ですか?」



いつしかアルコールは机の上に置かれていた



「そうだ。もう誰も君を責めたりはしないさ。」

「…違います。責めないんではなく、責められないんですよ。死んでしまったから…助けられなかったから…!」


叫ぶように吐き出した言葉が、二人しかいない部屋に、静かに響いた――



そして、暫く静寂が破られることはなかった




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ