名をくれた君を想う
□第八章
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~side小春~
しんしんと雪が降っている。
それらは積もらず、一瞬のしみを残して地に溶けてゆく
「咲弥様ー。咲弥様ー!」
「どうしました。姫様は森の奥でお休み中です。・・・急用ならば呼んできますが?」
「あ、いえ。
ようやく寒さが緩まり、冬ごもりから出てくる者が数名おりますのでご報告をと思ったのです。
咲弥様をわざわざ起こしていただくほどのことではございません。
しかし…」
これまで嬉しげに話していた妖は最後に言葉を濁す
「咲弥様はいまだこもっておられるのですね・・・」
「・・・・・。」
私は何も言わない。
言えない。
彼が姿を消した日から姫様は森の奥深くにこもってしまった。
季節が巡り雪が降り積もり、そしてそれが溶けた今もなお、悲しみ続けている。
姫様。
あんなに堅く閉ざされていた大地も、緩やかにとけだしていますよ?
冬ごもりをしていた者たちも、目覚めようとしています。
姫様。
これだけの時が過ぎても、貴女はご自分の殻にこもり続けるのですか…?
皆、姫様が出てこられるのを待ちわびてるんですよ…?
姫様…………