名をくれた君を想う
□第六章
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「良いのですか!?あの場所に連れていって!!」
小春が驚いて言うと、咲弥は立ち止まった。
「あの場所は姫様だけの特別な場所でしょう!?」
そう、咲弥が夏目を連れていこうとしている場所は、主の彼女と、小春だけが入ることを許される特別な場所だった。
今まで周りのモノ達には見せないどころか、存在すら教えていなかったのだから、小春でなくとも驚く。
「・・・貴志は私に大切なモノくれたから。その恩返しみたいなものだよ。」
「・・・・良いの?」
小春の言葉を聞いて、戸惑った夏目が聞いた。
「良いんだよ。
それに貴志は私の大切な友人の縁者だし、貴志自身も私の友人だからね。」
「・・・・・ありがとう。」
本当に良いのだろうかと思いながらも、夏目は嬉しそうな顔をした。
「・・・・姫様が良いのなら私は何も言いませんが…。」
「なんかごめんね。小春。」
謝りながらも嬉しそうな咲弥を見ながら小春が
(あの場所連れていくのはいいけれど、ここまで『人の子』を気に入っていると言う事が心配ですよ。
どうか人の命が儚いことを忘れないでくださいね?)
などと思っていたことは誰も知らない。