BATTLE TENNIS ROYALE

□それでも、貴方が
1ページ/1ページ




バンッ、とあちらこちらから絶えない爆発音。
耳が張り裂けてしまいそうだ。

目の前には先輩の汚れた背中があって浅い呼吸を繰り返している。
俺もスタミナがあるとは言え、流石に走り続けていれば息もきれる。



「大丈夫か、若」


「えぇ…大丈夫です」



まったく、鳳並みのお人好しだ、この人。
自分だって疲れてるくせに後輩の心配なんて…

まぁ、先輩のそんな所に惚れてるんだけどな。

この絶望的なゲームでもし俺と先輩が残ったら、先輩はどうするのだろう
俺を殺すのだろうか。ま、それが妥当なんだろうな。


俺だったら…二人で逃げるか

俺が死ぬ。








案の定、俺が考えていた二人が残る、そんな想像は現実となって返ってきてしまった。


各学校の部長達が大勢の人数を減らし最後は部長達と殺し合い、勝利者…生き残った部長はいなかったらしい。

跡部部長も既にこの世にはいない…か。
下剋上はできなかった。



放送で流れた、生存者2名の声がまだ頭の中から離れない。


宍戸先輩は、うつ向いたままで喋ろうとはしない。
それも、そうか。俺達が地下に隠れている内に俺達は仲間を一斉に失ったんだ。

悲しくない、と言えば嘘になる。
だが、泣こうとは思わなかった。

まだ、ゲームが続いているのだから。



「先輩…」



「…。」



「宍戸先輩…」




無言のまま顔を俺に向けると、先輩は泣いていた。
初めて見た、先輩がこんなにも泣いている顔を。

そこで、ふと先輩の手から携帯が転がった。開かれた画面の内容はメール受信画面だった。


その時、俺は画面を見なければ良かったと後悔した。




メールが届いたのは先程。
相手は鳳からだった。
メール内容はただヒトコト。



“愛してます”





妨害電波が張り巡らされてあるこの島で連絡は不可能。
だけれど、何らかの隙間に鳳が最後に送ったメールが先輩へと届いたのだ。



俺は知っていた、鳳と先輩が恋仲であることを。
知っていた、俺が好きになる前から先輩が鳳を好きだったことも。
知っていた、もう俺の恋が叶うわけないことも…


全部全部、知ってたんだ。





「先輩…先輩は愛されてますね…」




そう言って携帯を握らせて、俺は武器に使っていた日本刀を鞘から抜いた。




「…わ…かし…?」




「先輩、勝利者は一人だけなんですよ」






そう、死ぬのは後、俺だけだ。







日本刀の刃を首横に構えた。





「若!バカな真似はよせ!」




「先輩、このままだと俺達、二人とも死にますよ…」




「お、俺が…俺が死ぬから!」




「…鳳のメール…一番下を見ましたか?」






先輩は急いで携帯を確認すると目を見開いて、また涙を流し始めた。





「貴方は鳳を愛してた、鳳もまた貴方を愛していました…」




「若…やめ…」




「俺は…それでも、貴方が好きだった…」





刀に力をいれて切りつけた、あまり痛みもなくて、すぐあちらに行けそうだ。



鳳のやつ愛してるとかギザな奴だな、しかも最後に(生きて)とか
まったく、腹の立つ奴だ…。







まぁ、いいか。












エンド

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ