BATTLE TENNIS ROYALE

□ハヤク
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そー言えば前観月に


「観月って努力家だね」


って言ったら



「誰だって努力はしますよ、…貴方はしないんですか?」



って聞かれた事があった。
その時の僕の答えは確か、



「したことないよ……」



って笑って答えた。
本当は違うんだけど、その時は言えなかった。










「観月………どうしたの?早く殺しなよ?」



観月が僕に銃を向けている、この状況で
昔の事なんてよく思い出せていられると自分自身に驚くよ。

何人殺してきたか知らないけど
観月に付いている血液は全て返り血。
それに観月はまだ自我がある。



「ほら、早く……赤澤達も殺って来たんでしょ?」


その言葉に観月が口元を噛み締めたのがわかった。




「違いますよ…赤澤は、赤澤達は……」



僕を庇って死んだのだと、観月は弱々しく口にした。



僕はクスクスと笑った。だって全て知ってるから。
観月はそんな僕を見て更に冷たい視線で睨んでくる。



「僕にトラップを仕掛けたのも刺客を送り込んだのも……全て貴方ですね木更津。」


「クス……正解だよ観月。」



今いる教会の中は静か過ぎて、僕たちの声しか聞こえない。
十字架の真下で銃を向けるなんて、ちょっと場違いだよね。


銃なんて気にせずに僕は歩いて
マリア様が飾ってある段に座った。
その間にも観月は銃を向け続けてた。



「そんなに僕が憎いですか」



怯えもせず坦々と問う観月。
憎い?違うよ。僕はただ気に食わないだけ。




「観月さぁ、前僕に努力したことないのかって聞いたよね?」


「……」


「努力したことないって僕言ったけど……あれ違うよ。」




観月はまだ意味が解らない、そんな顔をしている。
僕は笑いながら天井のステンドグラスを見つめた。色とりどりのガラスが綺麗で触れたくなった。



「僕ね、努力してたよ…沢山。」








そう、僕は努力していた。
亮に負けたくなくて、観月達にも負けたくなかったから
努力してたんだよ。


でも、一番は観月が羨ましかった。



元々のテニスの才能、回りから頼られる…
そんな観月が憎いくらい羨ましかった。








「努力は報われるから頑張れ、観月は僕に言ったね。」



ステンドグラスに手を伸ばしてみる。




「観月はいつも正しいけど、それは間違ってるよ?」




立ち上がり、警戒を緩めない観月の目の前に立つ。
怖がらないんだ、つまんないなー…





「努力しても報われない人だっているんだよ?」






そう、僕みたいにね…
呟いてから銃を持つ観月の手を上から突かんで自分のこめかみに当てた。





「やっぱり、観月が苦しむ顔は拝めなかったかぁ」



「木更津…!?何を」



「僕を殺せば観月が優勝。だから殺してよ僕を。」




ここで死ねれば、それはそれで幸せだよね。





結局僕は何がしたかったのかワカラナイ。
観月を苦しませたかった?
自分の自己満足?



まぁ、今から死ぬんだから
どうでもいいか。




「早く撃ちなよ、憎いでしょ僕が」













──────ハヤク。









暗転直後に写り込んだ風景は

笑ったマリア様と色鮮やかなステンドグラス。




悲しいくらい、綺麗だよ。










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