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□=序章=
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江戸の人里離れた山奥。
その麓にある一軒家。


そこへ、訪ねてきた少女が一人。


背丈は一般女性より少々高く、容姿端麗、という言葉がぴったりな立ち居振舞いだ。
髪は綺麗な藍色で、腰の位置まであるそれを、横に流して結んでいる。
瞳は黄金に光り、左頬には雪の結晶のような痣。








少女は家の入口に立ち、中にいるであろう人物に声をかける。








『大爺様。流華です。只今参りました』








………………







聞こえなかったのかと思い、先程より声を張って呼んだ。

…が、中からの返答はない。








『…………。まさか死ん「でおらんわ馬鹿者!」うわっ、びっくりした…』








流華の言葉を遮った老人は、自分と同じくらいの大きさの山菜カゴを背負い、流華の真横に立っていた。








『相変わらず気配を隠すのがお上手で。全然気付きませんでした。大方の気配は読めるつもりだったのですが』





大爺「年寄りだからといって嘗めるでない。誰の師じゃと思うとる。師匠が弟子に負けるなど、あってはいかんじゃろう?」




『ははは。まあ、そのくらいあってもらわないと困りますね』


流華が、笑いながら頼もしそうに老人を見て答える。





大爺「ともあれ、よく来たの。流華よ」





少女は微笑んだ。








『ええ、お久し振りです。大爺様』
 

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