雨のち晴れ

□第三話
1ページ/10ページ





≪恋愛って、どうすれば良いの?≫

ルクリのこの一言がキッカケだった。








「……突然どうしたのさ?」
≪ぎゃー!!声に出さないで!!≫
≪……もう少し、女らしい叫び方をしたら?≫

半ベソを掻くルクリに、苦笑いなセスイだった。

「ルクリがどうかしたのか?」

一緒に食堂でお茶してるキラーが、突然話し出したセスイに、ルクリと話してるんだろうと分かると、声をかけた。

「ん〜、何かね……」
≪言ったら、ずっとスカート穿いてやる!それでも良いの?≫
「うん!何でもないや」
「は!?」
「オレの死活問題の話し?」

言ってる事がよく分からず、とりあえずストローでお茶を啜ったキラー。

「それにしても、キッドと付き合うようになってからも、殆ど表に出て来ないな……ルクリは」
「キラー?乙女心は複雑なんだよ?」
「……お前が言うと、変な説得力があるな」
「中身は男でも、外見は女だし?」

意味あり気な笑みを浮かべるセスイは、キラーに聞いた。

「ルクリが表に出て来ないと、キッドの機嫌が悪いのか?」
「そうだな。少しぐらい、二人でゆっくりさせてやったらどうだ?」
「オレは構わないんだけどね?」

ルクリは恥ずかしがり屋さんだから、なんて笑うセスイに、キラーは苦笑いしか出なかった。

「恥かしがり屋も良いが、キッドに会ってやらないと、不貞腐れるぞ」
「だってルクリ。表に出る?」
≪どんな顔して会えば良いの?≫
「普通で良いんじゃない?」
≪普通って何!?≫

恋愛初心者には、難しい事みたいだと思ったセスイは、さすがに恋愛どころか、人付き合いもまともにさせなかった事を、少しだけ後悔した。

「少し、甘やかし過ぎたかな?」
「何がだ?」

突然ポツリと言ったセスイに、キラーが不思議に思えば、ルクリの事と答えた。
それを聞いたキラーは納得した。

「まぁ、確かに甘やかし過ぎる部分もあるな」
「じゃあ……最初の一歩としてデートしてくれば?」

此処のログは二ヶ月だし、何よりオレは本も買ったし、夜は本読むのに身体の主導権を貰ってるし?なんて言えば、ルクリは慌てだした。
その時、丁度キッドが食堂へとやってきた。
これはチャンスとばかりに、セスイはキッドに声を掛けた。

「キッド!ルクリの買い物に付き合ってやってくれないか?」
「はぁ!?いきなり何だ?」
「ルクリが欲しい服があるんだって?」
≪確かに欲しいとは言ったけど、お金は節約するって話したばかりじゃない!≫
≪お膳立ては此処までだよ?後は自分で頑張れ?≫

セスイはそう言うなり、強制的にルクリを表に出した。
キラーとキッドは、表情が変わった事に、ルクリが表に出てきた事が分かった。

「……ルクリ?」
「は、はい!」
「いい加減、オレ達に慣れろ」

キラーは呆れながら言えば、相変わらずなのか、すいませんと謝るルクリ。
キッドは微かに溜め息を吐きながらも、食堂を出ようと、ドアノブに手を掛けた。

「キッドさん?食堂に何か食べに来たのでは?」
「……外で食う」

そう言って、食堂を出てしまった。
どうしたんだろうと思っていれば、キラーがクスクスと笑った。

「キッドが、服を買いに行くのを付き合ってくれるそうだ」
「え!?」
「早く行って来い」
「は、はい!」

慌てて食堂を後にするルクリに、キラーは誰にも聞こえない程の声で呟いた。

「……あそこまで男慣れしてないとは。キッドの欲求不満もいつまで持つか……」

恋愛は難しいものだと、何かを悟ったように思うキラーだった。






next→
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ