隠し部屋
□生きる糧
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程々に長い階段を昇り境内に入ると神社の裏手に回る。
その神社の裏は山になっており、貴重な草木が生えているのだ。
私は迷うことなく足を進めて手入れされた森を歩いて行く。
作品にするのに良い場所がないかキョロキョロと見渡しながらしばらく歩いていると徐々に足元の草が生い茂ってきた。
「もう少ししたらいい場所があるかなぁ」
人の手が入っていない自然に制作意欲が湧いてくる。
これでいい被写体が見つかれば文句はない。
それから30分歩いた所で大木を見つけた。
その大木は他の木々とは明らかに違い、生命力に溢れ、枝を思いっきり広げている。それに蔦が巻き付き色鮮やかな大振りな花を咲かせている。
私は力強さを感じる木に心を奪われ、カバンからクロッキー帳と鉛筆を取り出すとその場に座り、デッサンを始めた。
どのくらい時間がたったのだろうか、集中して鉛筆を動かしていたら時間を忘れてしまう。
大学を出たのが14時頃で青空が広がっていたのに今は茜色に染まっている。
いくら神社が近くといっても人の手が入っていない所まで着てしまっているので人口灯の元に出るのに少し時間がかかってしまうだろう。
本格的な夜になる前に急いで森から出ないといけない。
クロッキー帳と鉛筆をカバンになおそうとしてドキっとした。
なぜならいつの間にか茶色い木の根のようなものが肌に触れないギリギリをキープして絡み付いていたからだ。
「なっ何よこれ!いつからっ」
私が声を発すると木の根が肌に触れ、足を締め付けだした。
「いっ!」
すぐに取ろうと木の根に触れ、四苦八苦していると後ろからも新たな木の根が手首に絡み付いてきた。
「嫌ぁーーーっ!」
気配もなく背後から現れたそれに驚きと恐怖で叫ぶ。
そんな私をお構い無しに土から木の根が続々と現れ、拘束していくので半狂乱になって叫びながら暴れるがびくともしない。
終いには木の根で両手足と首と腰をがっしりと拘束され、体を持ち上げられた。
「うっうっ…嫌ぁ…誰か助けて…」
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