隠し部屋

□山の主
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私は深く息を吐いた。何故かって?遭難しちゃったからさ!!

ことの始まりは、知らずにブラック会社に就職してしまい仕事が忙しく休む暇もなかったことだ。数ヶ月ぶりの休みも1日だけでまた忙殺の毎日。我慢をして働いていたが2年で限界がきて辞めた。それで思いっきり休もうと思って、一週間はダラけた生活をしていたがマイナスイオンが吸いたいと急に思い立ち、学生の時に登山部に所属し愛用していた道具を引っ張り出して飛び出したのだ。
整備されていないゴツゴツした山道に安心し、生い茂る緑にリラックスしながら登って行った。登頂し、思いっきり空気を吸い込んで吐き出す。満ち足りた気持ちで心が緩んでたんだと思う。ふわっと飛んできたモンシロチョウが目につき、ふらふらと後をついて行ってしまったのだ。暫くして我に帰るとここ何処状態。しかも雨が降ってきて、次第に雨足が強くなりどしゃ降り。周りを見渡して、洞窟を見つけたから逃げ込んだ。そこで冒頭に戻る。

「あぁ〜〜。浮かれすぎちゃったなぁ〜。」

壁に背を預けて座り込む。

「蝶々について行くとかどんだけぇ〜。しかも携帯を家に忘れてきちゃうし。雨が上がったら取り敢えず下山しよう!そんなに大きな山じゃなかったし」

リュックからカロリーメイトを取り出して食べ始めると奥からジャリっと何かが地面を踏みしめる音が聞こえた。

「えっ!?」

ハッとして両手で口を塞ぐ、熊などの猛獣だった場合、取り乱して声を上げたら襲われかねない。その間もジャリジャリと音は続き、次第に近づいてくる。
洞窟の奥の暗闇から徐々に光りの元へ姿を現したのは化け物だった。
リルは、その化け物を目を見開いて固まったまま凝視した。
それは厳つい男の顔に浅黒い肌、こめかみらへんからは闘牛のような角が生えており、手首から指先まではネコ科の手、膝から足先までは鷲の脚をしている。
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