隠し部屋

□絶滅危惧種
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この星は人間が支配しているが植物や動物、昆虫の他に妖怪が生息している。

特に妖怪は、知能の高い者を筆頭に人間と協力して生活しているのだ。

そしてその妖怪の中には人間が保護しなければ生きていけない種もいる。

その保護のための施設が近年作られテレビなどで紹介された。

その施設は数多の生物を守るのに喜ぶべき場所だ。

しかしその実情は残酷なものだ。

今日も外には漏れることなく悲鳴が響いているのだろう。






私の名前はリル。今月で16歳になる。両親はいない。何故なら私が赤ちゃんの時に捨てられたからだ。
でも孤児院の前に捨てられたおかげですぐに発見され、育てられた。
私にとって生家と言うべきこの場所も今日でさよならする。
引き取り手が見つかったからだ。

なんとあの有名な種の保存施設の職員に引き取られるらしい。

あそこで働いているということは公務員の中でも上位の人だから裕福に暮らしていけるだろう。

ラッキーだ!

「リルちゃん!お迎えが来たよ」

「わかりました」

奈美恵さんといって、恰幅が良くこの孤児院の母的存在に笑顔で呼ばれ、私も自然と口がほころぶ。

「今日からよろしくね。リルちゃん」

「こちらこそよろしくお願いします」

「これから家族になるのに他人行儀な挨拶してるんだい!もっと砕けなさい」


そういうとバシバシと背中を叩かれた。

「奈美恵さん痛いよ!」

「いい子に育つんだよ」

ギュッと抱きしめられ目に涙が溜まる。

「今まで育ててくれて有難う」

抱きしめ返すとさらにギュッとしてくれて体を離すと笑顔で送り出してくれた。


私の母親になる安岐さんの車に乗り込み、これから生活する家へと向かう。

「あ、家に帰る前に職場に行ってもいい?忘れ物しちゃって」

「いいですよ」

「そうだ!中に入ってみる?」

その言葉に驚いて安岐さんの顔を見る。

「えっ!?いいんですか!?」

「今回だけ特別!母親になる私の職場を知って欲しいしさ」

ウインクして言うのでお茶目な人だなぁと笑った。

「と言ってもそんなに回れないけどね」

「そんな!限られた人しか入れない所なのに入れてもらえるだけで十分ですよ!」

「うふふー、色んな生き物がいるからきっと驚くわよー」

「楽しみですです!!」



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