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ふとキッチンを見ればいつの間にか皆の手にあった袋は玄君が回収していて、食材は包丁でザクザクに刻まれている。


「火ぃ通った?」


「さぁ」


紺君は玄君のスムーズな調理の動きに感心しながらキッチンにこもり、時々調味料等を受け渡ししている。小皿を受け取った玄君はコンロの上でグツグツと煮立てている土鍋にお玉を入れて小皿に移し、小さな仕草で味のしみたスープを口に入れた。


「玄どう?」


「どうって言われても………」


常日頃藍君のためにお菓子を作って舌が肥えたのか、ただの味見に美味しいとは言えないらしい。既に火の通った白菜を摘まむと肩越しに紺君の口へと運ぶ。あれ、君ってそういうことするキャラだっけ?


「あーん」


「あー、ん。うん、美味しい!」



「あー、ズルい! 玄君僕も僕も!」


ズボンを小さな手で掴んでねだる藍君を玄君は撫でて、丁寧に食べやすい大きさにして具材を挟み膝を折って食べさせる。


「はい、藍。あーん」


「あーん! ん〜美味しい〜!」

眉を下げて笑う藍君に安堵しているのだろう。玄君が僅かに微笑する。そのまま藍君を抱っこすると、再び摘まみ食いをしようとしていた紺君の手を制してテーブルまで運ぶように促した。


「何してるの紺。それ出来たから運んでくれる?」


「あはは! 了かーい!」



「青、青ー!」


「あぁあああああ兄貴マジウゼェえぇ! 寄るな! 触んじゃねぇ!」


あぁ、もういくら優秀な俺の頭でもついていけない。結局何がしたいのかわからないし、意味不明な現状に流されちゃうし。


「ねぇクロt「折原」


「……だからさ、何でいちいち俺の邪魔するようなタイミングなの? いきなり押し掛けたかと思えばゲーム始めるしあっちは鍋作るしこっちは変わらずにうるさいし」


「わからないか? わからないだろうなぁ、折原」


あからさまにバカにしたクロちゃんにキレそうになるがこんな安っぽい挑発に乗るなんて俺が廃るから、とりあえず黙る。



「当たり前だろう。意味などない」


意味もなければ理由もない。


はぁ?
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