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□珈琲喫茶店3
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俺のターンなんて恥ずかしいセリフを言うわけない。
ここからは俺、青視点で行くぜ。
***
どうしてそうなった。
衝撃的な光景をみて、咄嗟に跳び蹴りをしなかった俺をどうか褒めてほしい。いや、別にいらないけど。
普段はクロ兄の家(といってもマンション)で紺たちと戯れているわけなんだけど、どういう訳か今日はマンションの玄関に鍵がかかっていて。
することもなく、かといって家には変態な兄がいるだろうから帰る気もなく、ょうがないからフラフラと街に出掛けてみたわけだ。
だが、駄目だった。
違う意味では出掛けて正解だったんだけど、また違う意味ではこの選択は間違った。
割りといるギャラリーのなかで、紺がファーコートの男を引き寄せて顔ギリギリで寸止めをしたのだ。
「!?」
何事!?
え? だってここ街中だよ?
いやいや違くてさ。
待て。
落ちつけ。
はやまるな。
何があってどうしてそうなった。
俺の角度では、その、まぁ際どいんだよ。かなり。
何をしたら良いのかと悩んでいると、二人の表情があまり良くないことに気づいた。ファーコートの奴はきょとんとしてるし、そんな男を紺は珍しくも鋭く睨んでいて。
あれ?
本当にどういう状況?
よくわからないが、このまま放置するわけにはいかないだろう。不意に横から軽やかな短い音楽が聞こえ、見れば通りすがりらしい女性がスマホで2人を録画しながらハァハァと悶えていた。
「イザイザ、誰? その子誰? 見た目チャラいのに中身ははっちゃけた真面目ちゃんなんて、何? あぁ、萌える! スペック高いよ! これは描くしかない! 同人誌を描くしかないじゃない!」
「……………?」
怖。
よくわかんないけど、怖。
まぁ、良いや。
とりあえず、紺だけ離脱させれば。俺の背は人並みに呑まれてるから、多分紺からは俺が見えてない。
「面倒くせーなぁ」
俺は覚悟を決めると、人と人の間に身を潜りこませた。