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□ブルー触覚
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青の頭に居すわっている触覚の話。黒目線。
***
いくら擬人化といえどもリアルに生きてる以上俺たちも外出はする。外出の理由はただ単に散歩だったり買い物だったりだ。個人で好き勝手に動いてるから道端で知り合いに出会う時もある。
普段なら気にしないことをその時に気になったのは晴れ晴れとした天気のせいにしよう。
向こうからきた青の頭にある触覚が、本人の鼻歌にあわせてウネウネと動いているのを見つけて思わずじっと見ていると、当然反対側から来た青も俺に気づいて気軽に声をかけた。
「クロ兄じゃん! 何、買い物?」
ピロピロと触覚が波うって、青の言葉をまるで動きで現しているようにも見える。
気になるな………。
「あぁ。新宿に行って用事を済ませてきたところだ」
「へぇ、そうなんだ? 俺3時頃帰る予定だから」
「そうか」
帰る予定が3時だから何だというのかは知らないが、やっぱり触覚はピョコピョコと動いている。青にその感覚があるのか、はたまた触覚には触覚の意識があるのか。他の髪の毛は動いたりしてない。
この触覚だけなのだ。
アンテナか?
だが青はアンテナなど装備していない。ならばコレはなんなのか。
じっと見ていると徐々に悪戯心がわいてきて、でもどうするかと悩んでいたところで紺から通信が入る。
ちょうど良いタイミングに連絡をいれてきた紺の話を無視する。
『もっしもーし! クロちゃん? 俺今ねー「あぁ紺か。お前、触覚ってどう思う?」
突然の不可解な俺の言葉に向こうから疑問符のついた声が聞こえる。
『え? 触覚? なんで?』
「青の頭の触覚が動いてるからだ。何だあれは。生き物か?」
なぜかいつもテンションの高い紺は、同時に腹黒でもある。だから奴は青のことを考えもせずに『引っ張ってみたらー? とれるかもよ』とケタケタ笑いながら答える。
あぁ、なるほどな。
そうだな。確かに引っ張ってみたほうがはやい。
既に先を歩いてる青に近づいて、紺との連絡を切らないまま青の頭に手をのばす。そして。
ぶちっ
「いったあぁああぁあ!?」
鈍いのか鋭いのかわからない音が耳に、何かが抜けた感覚が手に伝わって。
握りしめた手の中では、確かに青の頭に生えていたはずのソレが何とか俺から逃れようと暴れていた。
「………取れた」
『え? ちょ、マジ? あはははははははは!』
プギャーとあの人をバカにした独特の顔文字を浮かばせるような紺の笑いとは反対に、青は涙目になりながら「触覚返せ!」と怒鳴っていた。
***
結論。
青の触覚:正体不明