偽りの白

□十六章
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雪村千鶴side


 「千鶴」


 誰もいないはずなのに突然呼ばれて私は驚き振り返った。


 「そんなに驚いた?洗濯物落ちたよ」


 今日は上機嫌らしく固まる私の足元に屈むと落ちてしまった服を拾い上げた。


 「どうして?」


 「はあ・・・言っただろ、また来るって。そんなに物忘れが激しいの?」


 呆れたように言って彼は服の泥を払い洗濯物の山へ乗せた。


 「だって、あれからしばらく来なかったから・・・」


 「俺もいつも遊んでる訳にはいかないんだよ。それより朗報だ」


 彼は思いついたように言葉を止めるとにやりと笑った。


 「やっぱり始末が終わってからにする。じゃあ、楽しみにしててね」


 そう言い残すと彼は止める間もなくひらりと姿を消した。


 彼は本当に何者何だろう?私にわかるのは新選組の敵なのかもしれないことぐらいだ。


 ・・・けど、なぜか根本から嫌いになれない。


 私と彼はちょっとだけ似たようなところがあるような気がして


 もしも違う形で会えていたら何か違ったのかな?


 案外、普通のご近所さんとして会えてたら仲良くできたのかもしれない。


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