偽りの白
□十二章
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沖田総司side
屯所移転は目立った問題もなく終わり、季節は初夏へと移り変わった。
「新選組の方、ですよね。少しお尋ねしたいのですが」
巡察中に声をかけてきたのは、おしとやかそうな女の子。に見える胡散臭そうなやつ。好意的に見えるけど、目が笑ってない。
「何か用でも?」
厄介事だったら嫌だなと思いながら足を止める。
「ええ、人を探しているんです」
隊士の誰かの知り合いに装った間者または暗殺者ってところかな。
「名前という方をご存知ありませんか?」
出てきた名前に動揺しそうになる。まさかこんなところで名前の話になるとはね・・・。動揺を押し隠してわざと興味なさげに言った。
「ああ、元三番組伍長の?」
「おそらく・・・」
「じゃあ、僕から言っておいてあげるよ。君の名前は?」
厄介だけど放って置くわけにはいかない。新選組、そして名前にも害を与えるかもしれないし。
その子はほっとしたように小さく笑って答えた。
「南雲薫と申します」
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