偽りの白

□十章
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名前side


 しばらくして総司さんが屯所へ帰ってきた。彼を連れて・・・


 処刑は本人の望みでその日の内に行われることとなった。


 皆で山南さんを遠巻きに囲むよう立つ。静かで重苦しい空気が漂っていた。


 誰も何も言わない。


 ふと昼間の千鶴ちゃんの泣き顔が思い出された。


 素直に悲しみを表に出せることが今は少し羨ましい。


 「心残りはねえか?」


 「ありませんよ」


 ・・・こんな時にまで山南さんらしく穏やかで


 屯所を出る前よりもずっと楽に息ができているように見えた。


 「沖田君、迷惑をかけますね」


 「いえ、構いませんよ」


 誰も止めない。


 総司さんは山南さんが動くと同時に刀に手をかけた。



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