偽りの白

□八章
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名前side


 もっと気不味くなるんじゃないかと思っていたけれど・・・そつ無く隊務をこなす姿は変わっていない


 「名前、何ぼーっとしてるの?」


 「わっ」


 至近距離に総司さんの顔があって思わず叫んでしまう。


 「僕といる時に考え事なんて妬けるなあ」


 さらに身を乗り出してくる。


 「近いです」


 て、照れる


 「嫌なの?」


 私の答えを確信していて訊いてくるなんて・・・意地悪。


 「他の隊士に見つかったら困ります。ただでさえ人が増えたから注意しないといけないのに」


 先日、藤堂組長と同門の伊藤さんらが新選組に入隊した。


 私が女だということは当然伏せてあるため今まで以上に注意しないといけない。


 「僕、あの人嫌いだな。誰か早く追い出してくれないかなあ」


 「総司さん・・・そんなこと言ったら駄目です」


 「はいはい、わかったよ」


 おいでと言われて私は総司さんにもたれかかった。


 「ねえ、名前」


 「何ですか?」


 見上げると優しげな目と合った。


 「やっぱり何でもない」


 真冬の寒い空気の中、総司さんと寄り添った右側だけは温かかった。



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