偽りの白
□六章
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雪村千鶴side
たくさんの人で賑わう京の町。
「何か欲しいものでもあった?千鶴ちゃん」
「あ、いえ、人が多いなあと思って」
池田屋事件と蛤御門の変で手伝いをしたご褒美で、土方さんが外出許可を出してくれた。
と言っても、京で知り合いなんていないから名前さんについて来てもらっている。
「疲れたよね。休憩しよ」
名前さんはおすすめの茶店があるからと案内してくれる。
「他に行きたいところある?」
「ありません」
本当は斎藤さんについて来て欲しかった。でも、お仕事があるだろうし困らせたらいけない。
ふと通りの方を見ると一組の男女が仲良さげに歩いていた。
斎藤さんは・・・あの人と町に来たりするのかな?
そんなの嫌。私が、
「一緒に来たい」
「誰か気になる人でもいるの?」
知らないうちに口に出してしまっていたようだ。
私の独り言に名前さんは悪戯っぽく笑う。
「え!?あ、その、そういう訳じゃ」
「大丈夫。誰かに言ったりしないから。んー、もしかして隊士の誰かとか?」
「・・・はい」
名前さんの優しい目を見てて嘘はつけなかった。
「そう。自分の気持ちを大切にしてね」
自分の気持ちを大切に?
「応援してるってこと」
・・・名前さんだったら
「あの!相談にのってもらえますか!?」
久しぶりの開放感に気が緩んでいたのかもしれない。
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