偽りの白

□幕間 壱
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土方歳三side


 名前と初めて出会ったのは小さな村と村の間にある寂れた道だった。あの時のことは今でもよく覚えている。


 粗末なを着た十くらいの年のガキが道の端に座り込んでいた。


 何となく無視して通れず声をかけたんだ。


 「お前、誰か待ってんのか?」


 「うん。ねえ、お兄ちゃんがお母さんの言ってた迎えに来た人?」


 こっちを警戒する様子はない無邪気なガキ。・・・母親に捨てられたのか?


 「母親には何て言われたんだ?」


 「『ここで待ってたらお迎えの人が来るからいい子にしてて』って」


 ガキはまるで自分に言い聞かせるように言った。やはり捨て子か。


 「そうか。俺は迎えの人じゃない」


 世の中には捨て子を拾ってやるようなやつもいるらしいが、俺は偽善なんざしようとは思わない。


 それに今の俺は試衛館に居候している身だ。ガキを育てられるような状況じゃない。


 「・・・ついて来たいんだったら、ついて来い」


 わかっていながら何故あの時そう言ってしまったのか。今、考えてみてもわからねえ。何でだろうな?


 もしも運命ってもんがあるんだとしたら、


 俺は背を向けて歩き始めた。後ろからついて来る気配がした。


 信じてみるのも悪くない。そう思った。


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