夢小説
□キセキ
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「黄瀬」
どうして、死んだはずの君が俺の目の前にいるの?
何度問おうとしたか、もう数えるのすら面倒臭くなってしまった。
名前っちは、俺の事、黄瀬って呼んでたッスよね
目の前でまだ幼い笑顔を見せられると、胸が張り裂けそうな程痛くなる。
黄瀬、黄瀬
ああ、前の世界より君は俺の名前を沢山呼ぶんだね。
なら、今、君は、俺が好きなんだね。
「…黄瀬、好き」
俯いていてうまく表情は読み取れない。でもその微かに見える耳が真っ赤だってことはわかる。
「名前っち、こっち向いて」
ぴくりと肩を揺らす名前っちの肩を優しく抱き、甘ったるい声で囁く。
「……黄瀬…」
「………っ」
ああ、やめて。
そんな目で俺を見ないで、やめて、名前っち。名前っちに見つめられてるとあの日、あの時、あの瞬間の気持ちを思い出してしまう。
君は死んだんだよ。もうこの世にはいないんだよ。
でも、俺はこのままでいたいッス。
このままでいるには、どうすれば―――――
死者の名前っちとずっと一緒にいるには、なんて。簡単だ。俺が彼女の為に、死んでやればいいのだ。
そう気付いた時にはやっぱり遅くて。前の世界ではああ、自分からはこんな声も出るんだ、って驚くくらい酷い声が出た。
苦しかった。胸が苦しすぎて、死んじゃうんじゃないかってくらい苦しかった。
もうあんな思いは二度としたくない。
だから、名前っち、今度は俺が名前っちより先に死ぬよ。
「名前っち、大好き
…っいちばん最初の世界でも、前の世界でも、前の前の世界でも、俺、名前っち…大好きっ…」
死人の唇なんていいもんじゃないかも知れないね。でもね、名前っち、この世界から消えてしまう最後の瞬間まで、俺は名前っちに触れていたい。
「黄瀬…!黄瀬っ!!やだ、やだ!黄瀬、黄瀬ぇ…!」
――――――………あ、
名前っちが、泣いてる。
自分が選んだ最高の結末だと思ったのに、こんな、こんな、俺は名前っちに泣いてほしいんじゃない。名前っち、泣かないで。
名前っちの頬にどれだけ頑張っても手は伸びず、頬に雫だけが落ちてくる。
――――ああ、こんなの
「…っ、名前…!ち…」
最悪のバッドエンドじゃないか