夢小説
□高尾
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「名前ちゃーん、高尾名前ちゃーん」
重い瞼を開けると眼前に広がったのは高校の制服に身を包んだお兄ちゃん。背中に伝わる感触はら、ソファで居眠りをしていたんだと気付く。体を起こしよく見れば部屋が薄暗い。それに
「…、…雨だ」
ぽつりと漏れた言葉にお兄ちゃんは振り向いて、
そ、おまけに雷だってさ
と、眉を寄せ笑いながら新聞を突いた。
「お母さんとお父さんは?」
「仕事だって。
今日は帰らないらしいよ」
そっか。言いながら立ち上がり小さく伸びをする。二人がいないならご飯の用意しなくちゃな。面倒くささを感じつつ部屋に足を運ぼうとした。
窓の外が光り、ごろごろ、小さな音がした。
「…………雷、鳴ったね」
「そうだね」
「……名前、」
「ん?」
お兄ちゃんがすぐ隣に立ち、その唇を動かそうと何度も口を開いている。でもいつまで経ってもお兄ちゃんはなにも言わなかった。
お兄ちゃん、もう上行くね。佇んだままのお兄ちゃんをそのままに私はやたらとギシギシなる階段と、ドクドクと高鳴る心臓のリズムを合わせるように階段を上った。