夢小説

□高尾
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空が怒ってる。幼い頃の私は馬鹿みたいにそう思ってた。雨粒が屋根を、地面を打ち付けて、灰色の雲が空を覆い尽くす。ただの雨が酷くなり、何度も光る雷に小さい頃はよく脅かされた。

あの日も、そうだったな。

お母さんも、お父さんも出かけてて家には私とお兄ちゃん二人きりだった。
大きな音を立てて光るだけ。なのにそれが怖くて、不安で。部屋の布団に潜って必死に小さい手で自分の耳を押さえてた。


名前ちゃん、大丈夫?


雷の音よりもそれは、はっきり私の耳に届いた。
顔が丸くて、目も大きくてほとんど身長の変わらない兄は、私の事を優しく抱きしめてくれた。大丈夫だよ。怖くないよ。お兄ちゃんがいるよ。小さな小さな掌で頭を撫でられ。それに酷く安心した。


その日から私はオカシクなったんだ。


雷が鳴る度にお兄ちゃんに甘えに行った。お兄ちゃんに頭を撫でてほしくて。抱きしめて貰いたくて。お兄ちゃんに抱きつきに行く度、お兄ちゃんの身体は大きくなっていった。筋肉も付いてきて、目線も合わなくなってきて。お兄ちゃんは着々と男の人になっていったのだ。


「また鳴った…」

「はいはーい」


大丈夫だよ。お兄ちゃんが両手を広げながら笑って、私はその胸に抱きついた。心地良かった。安心した。でもそんな時、お母さんが言った。

アンタ達、もう抱き合うのなんてやめなさい
もう二人とも、男女なんだから














私はその日から雷が怖くなくなった



 
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