夢小説
□花宮
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「なんだよ改まって」
くすりと笑う真。良かった、あんまり怒ってないみたい。真の機嫌が悪いと私も気分が悪くなる。ふるりと首を横に振ると真は幸せそうな顔で笑い私の胸元に戻ってきた。言いたいことあるなら口で言えよって。
うん。真。私喋れないの。真があの日私の口を縫い付けたから。名前には白がよく似合うって言いながら。でも、私の唇を引っ付けた糸は白なんかじゃなくて。汚い赤だった。
「…そうだ」
真は思い出したように私の手を掴んだ。今、名前文字書いたよな?って。あ、しまった。思った時には遅くて。鋭い痛みが走った手を見るとくっ付いてた筈の人差し指が離れ、床に転がっていた。
「他の奴と会話するかもしれねえからな」
まるで悪戯をしたあとの子供のようににんまりと笑う真。他の人と話すなんてする訳ない。だってこの部屋には真しかいないし、私はこの部屋から出れないんだから。
痛い。痛い。でも、こんなに痛いことをされても私は真の傍に居る。それは、私が真を好きだから。ただ純粋に。私が傍にいるから真はこんな風になっちゃったんじゃないか…って思うけど。きっと私が真の前からいなくなるよりずっとマシだ。まぁ、私が真からはなれたくないって我儘も入ってるんだけど。
それに、どれだけ痛くても真が私に好きだって言って、私を必要としてくれるならされだけでいい。痛いのも辛いのも全部どこかに飛んでいく。
「名前、好きだ…」
ほら。ね。今、私とっても幸せだ。
「…ふはっ…つーか、好きだとかじゃ表しきれねえ」
ああ、幸せだ。
「…愛してるぜ。
殺したいぐらい愛してる…」
照れながらはにかんだ真。
本当、幸せすぎて視界が歪む。