夢小説

□実渕
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「お待たせ」

ノックの後、玲央が部屋に入って来た。待ってましたと言わんばかりに両手を前に突きだした。ちょっと待って、今よそうわ。玲央はくすくす笑いながら湯気をたてるお粥にレンゲを入れた。確かにお粥も待ってたけど、正確に言えば、待ってたのは玲央だ。なんて、柄にもなく思う私はどうかしている。これも、風邪のせいだろうか。
お椀に入ったお粥を受け取り、立ち込める湯気を吹き飛ばすように、ふ、と息を吹いた。

「……、…」

「どう?」

「おいしい」

こくんと一口目を飲み込みながら言うと、玲央は、そ、と満足げに微笑んだ。いいお嫁さんになれるよ。茶化すように言うと玲央は眉をふにゃりと下げ、私は名前のお婿さんになりたいわ。なんて言ってきた。

「…そうだね」

私も、玲央のお嫁さんになりたい。
そう囁くように言うと、玲央は貰ってあげる、と悪戯な顔で笑った。いつか来るであろう未来を語り合うのはいつものこと。普段の会話に安心感を覚え、空になった茶碗を玲央に手渡すとまだ温かいお粥の入った茶碗が返ってきた。


 
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