短編

□偽りの好き
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雨が降る空の下。わたしは一人、そこに立ってた。約束の時間は午後二時。おやつの時間の一時間前。だけど、いつまで経っても現れない彼。それでも、わたしは帰ることなくずっと待ち続けた

もう三時間くらいは立ったと思う。寒くて凍え死にそう。どうして彼が来てくれないのかわたし、知ってるんだ



『やく、そ、く……したの、に。』



最近わたしの前で笑わなくなった彼は、会おうとすれば仕事仕事って言ってわたしの誘いを断ってた。わたしの誘いを断って他の女の子と会ってるのも知ってるんだよ。わたし、何でも知ってるんだよ?知らないと思っている愚かな彼。いや、もしかしたら知りながらもこうやってわたしを苛めているのかな

無表情なあなたを見ているとわたしがこうさせてしまったのかとわたしは自責する。それを楽しんでいるんでしょう?悪趣味な人ね


わたし、まるで忠犬ハチ公のようだ。ずっと主人を待ち続ける一途な犬。ああ、でもわたしは一途などではないか…うん。わたし、なんであんな男を今でも好きなんだろう。こんなにひどい仕打ちをされても好きで居続けてしまうんだろう?



「待たせてごめん。」



急に雨が止んだと思ったら、仁王がわたしに傘を差し出してた。でも、彼はわたしに向かって平気で嘘を吐く。電車が遅れたとか先生に捕まったとか、部活が大変だったとか

ねえ、さっきまで他の子と笑って歩いてたでしょ?ねえ、さっきまで笑ってたのにどうして、どうして…仁王はわたしの前だと無表情になるの。わたしはどうすればいいの。胸が痛い



『ううん、大丈夫。』


「そう。」


『うん。』


「じゃあ、行こうか。」


『うん。』



仁王から差し出された手を握った。ついさっきまで他の誰かと繋がっていた手。それでもわたしは仁王の手に手を重ねたのはきみが好きだから?なんでだかわたしにもわからない。こんなにも嫌悪しているのに手を繋いでしまうのか

それでもわたしは、きみの手を離せない









偽りの好きをきみに、涙をわたしに
どんなになっても、きっとわたしは仁王の手を離せないだろう。わたしからは、離せないだろう。仁王がわたしを突き放してくれないかぎり、わたしはきっと仁王のそばで、仁王へと偽りの好きを囁き続けて涙する。ねえ、これって好きって言うのかな。わからなくなる





短いけど……頑張ってみました!自分のお題サイトからタイトル引っ張ってきてみたり。仁王だと切ないのが書きやすいです!







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