短編

□幾千の涙と大好き
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ころころと爪先にあたった石を蹴って歩く帰り道。ぽっかりと空いているわたしの隣。

どうしてこんなことになったのか考えてみるけどわからないことばかり。うん、でも一つだけわかってることがある。わたしが弱かったんだね。強がりばかりで何もできなかった。ばかなわたしは気づくのが遅くて



『ばいばい、か。』



最後に言った言葉は正解だったのかな。あれからしばらく会ってないけど元気かな?

彼女、できたってアキラから聞いたけど、あの子のことだよね。告白するって言ってたもんね。よかった、深司が笑うならわたしも笑えそう。深司が幸せならわたしも幸せ、か、な……。でも、笑えないのはなんで、かな?笑顔じゃなくて目から涙がこぼれてくるの。


未練たらしい自分に腹が立つ。素直に祝福できないなんて自分はすごく酷い人間だと自分を蔑んでみたりする。わたしは何もできなかったから何も言える立場じゃない。ねぇ、そうでしょう?

わたしがもし、深司にちゃんとわたしの気持ちを打ち明けられてたら何か変わってたかな。最近そんなことばっかり考えるけど、答えなんか見つからない。だって言えなかったことには変わりないんだから。



『結構、辛いか、も。』



だってずっと好きだったの。これからもずっとずっと一緒にいられるって信じてたんだもん。深司の隣はわたしだけの特等席で、わたしの隣は深司の特等席なんだって思い続けてたんだよ。とんだ妄想だったけど

離れていく深司の心に気づけなかった。わたしは近づいてるなんて思っていたんだけどなぁ…違ったんだね。



『あ………。』



昔はよく通って遊んでた川原。いつの間にかここに来ちゃってたみたいだった。本当に未練がましいね。

ちょろちょろと小さな音を立てて流れる川。この川はあの頃と何も変わらないんだね。わたしたちが変わっていってもこの川は変わらないんだ。それがなんだか嬉しくて、ちょっと辛かったりする。


わたしたちに足りなかったものってなんだろう?この川にあって、わたしたちに足りなかったもの。思いやり?優しさ?お互いを思いやる心??どれも、なんか違う気がする。たぶん、逃げたのがいけなかったんだね。伝える努力をしなかったから。



誰かが言ってた。男女の友情は成立しないんだって。昔はそんなことない!って胸を張って言えたけど、今は言えないよ。だって本当に成立しなかった。あれは幻想だったとしか言い様がないんだもん。

深司……大好きだよ。

この川の前では素直になれる気がした。ぽろり、ぽろり、と涙が零れだして制服のスカートに点々としたしみを作る。次いで押さえきれない嗚咽とともに本音がちょっとずつ零れ出る。


もう、恋なんかしない。恋なんかできない。こんな想いをするなら一人でいい。もし、願うならわたしはたった一つだけ。



『深司とずっと一緒、が、いいっ…!』



瞳を閉じて、ぎゅっと胸を掴む。この川の音を聞きながら、深司を想う。もう、恋なんかしないと誓う。それくらい、わたしはわたしは……深司が大好きでした。



『………愛してる。』



なんだか空が遠い。ぽつりと呟いた愛の言葉は誰にも聞かれることなく川の流れに乗せてどこかへ行きました。










もう届かない幾千の涙と大好き
戻れないってこんなにも悲しい


(お姉ちゃんどうしたの?)
(ん?なんでもないよ。)
(そーう?)
(うん。きみみたいな子がいいな。)
(何が?)
(内緒!)


この川原でした約束を覚えてる?一生一緒だよ、なんて易々と誓った偽りの約束。でも、わたしはあの時本気で誓ったんだ。それは、たぶんね、幼いながらに深司に恋をしていたから。最後に見たきみの後ろ姿は大好きなきみのものでした。







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