Gift

□背中合わせ
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――どうして自分を大切にしないんですかっ!


目尻に涙を溜めながら睨んでくる

君を守るために怪我をした僕を…

でもね、綱吉…






僕は君のためなら命さえ惜しくないんだよ―――…






=== 背中合わせ ===







「じ…じゃぁ教科書の215ページを開いて――」


教室 窓際 特等席

いつもはそこにいない生徒が珍しいことに授業を受けている

並盛中学校 風紀委員長 雲雀恭弥

最強にして最凶の不良でもある恭弥は教室にいること事態珍しい

…のに、左目に眼帯、右腕には包帯

ましてや、教科書を開いて授業を受けている

生徒はもちろん、教員までもが珍しい光景にいつもの授業中にはあるまじき真面目な態度で授業に臨んでいる

少しでも怠ければ咬み殺される


「今日は百人一首を覚えてもらおうと思うの…だが……」


ちらっと恭弥を見る

怪訝そうに眉を寄せて「なに?」と呟く

その言葉にクラス中の人間が肩を震わせた


「ひ…一人一首ずつ読んでいくか…佐々木から順番にいくぞ」

「は、はいっ」


――…吃り過ぎ


そう思いながら溜め息を吐く

自分がここにいることがそんなに不自然だろうか…いや、確かに不自然かもしれない

だからといって顔色を伺ってばかりいるのもいけ好かない


「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ」


生徒が喋りなれない言葉の羅列を読んでいく

恐らく恭弥はとばされるだろうが、暇なので教科書を目で追っていく

速読が得意な恭弥はさっさと次へと進む

五十首めで目を止めた


――あぁそう…こんな感じ…


いつの間にか自分の前の人間が四十九首目を読みおえていた

恭弥を抜かして読もうとした人が読み始めようとした瞬間、恭弥が読み上げる


「君がため 惜しからざりし命さえ 長くもがなと思いけるかな」


授業を受ける気すらみせない恭弥にクラス中が驚いた

そして恭弥は立ち上がると教室を出て行ってしまった


――…君のためなら、命すら惜しくはない…でも……君といつまでも一緒にいたいとも思うんだよ


こんなの矛盾してるよね


でも――…

  
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