小説2

□ひまわり
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真夏の農道を、真っ赤な愛車で走り抜ける。青空の下の気温は35℃。クーラーをガンガン効かせて、飛ばす飛ばす。目的地まであと少し。


「ボス、慌て過ぎて事故るなよ」
助手席のロマーリオがぽつりと呟く。
「事故らねぇって!…ったく、部下を巻き添えにする程ドジじゃねぇよ」



【別荘のひまわり畑で待ってます】



土曜日の昼下がり、愛しい愛しい奴からの短いメールにわくわくした俺は車のキーを掴むと、部下のロマーリオを連れて街を離れた。


「ひまわり畑で待ってやがるなんて…山本は相変わらずガキっぽいな」
ミネラルウォーターで喉を潤しながら、ロマーリオは呆れた口調で言う。
「ガキっぽいとこが、あいつのイイとこさ」
ハンドルを握りながら、ひまわり畑の中で待つ奴を想像して、ニヤついてしまう。ロマーリオは、そんな俺にも呆れているようだ。






『ディーノさん!』
一面が黄色いひまわり畑に、ぴょこんと黒い頭が見えた。
「山本ー!」
ブンブンと手を振る奴は、本当にガキのままで、俺とロマーリオは笑った。
「ボス、車は車庫に入れておくから早いとこ山本の所へ行ってやれよ」
「ああ、すまねぇな」
愛車をロマーリオに託した俺は、土手を降り、ひまわり畑へ足を踏み入れる。ぎっしり、太陽を目指して咲くひまわり達に、逞しさを覚えずにはいられない。ザクザクと進んで行くと、黒髪の汗ばんだ笑顔が俺を迎えた。
『早かったっすね!ディーノさん!』
「ハハッ!お前目指して、飛ばして来たからな」
『そーゆーの、嬉しいッスよ!』
ニカッと笑い、奴は手を伸ばして来た。ひまわり畑の中で、俺達は抱き合う。背の高いひまわりの下で身体をくっつけると、Tシャツに奴の汗が移っ来て……俺は堪らなくなる。
「山本、屋敷でシャワー浴びようぜ」
『あ、す、すいません!俺の汗がっ』
俺から離れようとした奴の手を握りながら、耳元で囁く。
「お前の汗は大歓迎だけど、一緒にシャワーってのもイイだろ?」
『ディーノさんっ////』
ちょっと顔を赤らめて、照れてる奴の手は熱く、冷たいシャワーと俺の肌で体温を下げてやらなきゃ…と、ひまわり畑から、屋敷へ向かった。



真夏の休暇は、夕方のひまわり畑から始まった。



END

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