小説
□ボクと彼とマシマロと
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『白蘭って、マシュマロをモフモフ食うのなー』
ソファーに座るボクの膝の高さから、じーっと見上げて笑う。
手を伸ばし、風呂上がりに乾かしたばかりの黒髪を撫でてやると、へへっ、とはにかむ。
「武チャンもマシマロ食べる?」
ボクの好物のマシマロを一つ摘み、彼の口へ運ぶ。
『マシマロじゃなくて、マシュマロなのなっ!』
「そんな事、イイから!」
マシマロをもう一つあげると、甘えた目付きで口を動かす。
「武チャンだって、モフモフ食べてるよ?」
『んー?そうなのな?モフモフ食うのは、白蘭だけかと思ってたのなー』
「ははっ、可愛い…」
ボクの膝に頭を擦り寄せる姿は犬のようだ。
捻り潰して一掃してしまおう…と計画中の抵抗組織・ボンゴレから、君を掠って来て良かったよ。
科学の力で、君の記憶を改ざん……生まれてから十四歳までの積み重ねられた過去を、綺麗に消した。
君は此処で生まれ、ボクが育てた事にした。
ボクだけの可愛い生き物【山本武】。
頬を撫でると、再び見上げ、舌で自分の唇をペロリと舐める。
こうゆう時の彼は、キスがしたくて仕方がない…見上げながら、ゆっくりと呟く。
『白蘭…キスして?』
キスをねだる彼の顎をゆるゆると撫でると、艶を帯びた目付きでボクを見る。
「武チャンからしてよ」
ボクにそう言われると、自ら顔を寄せ、目を綴じて唇を重ねて来る。
くちゅ……と、ボクの舌を捕らえようと、必死に絡めてくる君の舌…熱心に躾た覚えはないのに、こうゆう事はとても上手だよね。
『う…ん、白蘭っ』
そんなに色っぽい声を出されたら、ボクもつい、舌を絡めたくなっちゃうよ。
『はぁっ…』
紅潮した彼の顔に、ボクはそそられそうになるけど、彼の髪を撫でながら離れる。
『白蘭?』
捨てられた子犬のように、ボクを見上げる可愛い君。
「ゴメンネ、武チャン。もう会議が始まるから、ボクは行かなくちゃ」
『そうなのなー…帰りは遅いのか?』
「そうだね…先にベッドで待ってて」
『ん、俺、白蘭のコト寝ねぇで待ってっから…』
風呂上がりで勿体ないけど、ここは我慢。
ボクの胸に頭を寄せる彼…ああ、ホントに君を掠って来て良かったよ。
此処での君は、ボク無しでは生きて行けないよね?
「イイ子で待っててね、武チャン」
『ん、わかったのな』
彼に軽くキスをして、ボクは会議へ向かう。
彼の唇は、甘いマシマロの味がした。
これからも、君を甘く甘く育てて行こう。
身も心も、ボクがいなくては滅んでしまうように…甘く甘く甘く。
END