短編集
□懐かれるのも大変だ
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「カノンー!」
「ふぐっ!?」
急に名前を呼ばれたかと思えば、腹部に突進をかまして来た金色の物体。
それは明らかに人であるわけで…。
こんな事をしてくるのは私の知る限り、一人しかいない。
「こらアリシア!急に突進なんてしてきたらビックリするでしょ!」
「えー、急にじゃないよー。ちゃんと名前を呼んだよ?」
「名前を呼んでも、急にタックルをかましてくるんじゃありません」
「ぶぅ〜」
彼女の名前を呼んで注意をすれば頬を膨らませて不貞腐れる私の腰に引っ付いている女の子。
隣に住んでいるテスタロッサ家長女、アリシア・テスタロッサ…現在11歳。
小学5年生でもある彼女は普通の子供よりも身長がかなり低い。
というのも、幼少期には割と病弱だった為に身長があまり伸びなかったようで…
初めて会う人には実年齢も下に見られてしまうとか…。
「ア、アリシア…。急に抱きついたら、カノンも大変だよ?」
「フェイトまでぇ…」
そんなアリシアの後ろから姿を見せたアリシアと全く同じ声と顔のアリシアよりも身長の高い女の子。
テスタロッサ家次女、フェイト・テスタロッサ…現在9歳。
アリシアの二歳年下の妹で小学三年生。
「それでフェイト、どうしたの?」
「あ、はい。母さんが泊まり込みで帰れないから、今日はカノンの家にお世話になりなさいって…」
「ふーん、そっか」
テスタロッサ家の家主であり、二人の母親であるプレシアさんは大手研究施設に勤める研究者で、かなり忙しい人だ。
その為に泊まり込みでの仕事が入る事が多くて、その日は我が家に娘二人の世話を任される。
「まぁ、ここで立ち話でもなんだから中に入れば?部屋はいつもの場所、使って良いから」
「あ、はい。ほら、アリシアも」
「むぅ…まぁ、いっか。それじゃあ、今日もお世話になりまーす!」
そう言いながら私の家の中へと入っていくアリシアとフェイト。
その背中を見ながら、やっぱり姉と妹が逆じゃないだろうかと思うのは仕方がなかった
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