短編集

□家族
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「マスター♪」

「ん?ミク、どうしたの?」

「いえ、ただマスターの事好きだなぁって」



そう言いながら私の後ろから抱き着いてくる亡き父の遺したアンドロイド―正確にはボーカロイドという歌を唄うアンドロイド―のミク

今は少ない私の家族の一人でもある

でも…



「ミク、ごめんね」

「?どうして謝るんですか?」

「だってさ…ミクたちに曲、作ってあげられないから…」



唄う為のボーカロイドなのに、私はミクたちに曲を作ってあげられない

そもそも曲を作るといっても、どうしたらいいのかすら分からないのだから

亡くなった父もその事を教えることなく死んでしまった為、ますます分からない



「平気です。私たちは歌う為に作られましたけど…博士が一番に願ったのは、マスターの幸せですから」

「ミク…」

「えへへ、私はマスターが幸せならそれだけで良いんです」



そう言いながら笑うミクに、私の心は不思議と軽くなる

私の幸せを願ってくれるミク…いや、きっとミクだけじゃなく、ほかの子も同じはずだ

どの子もやさしい子だから



「あー!ミクちゃん、なにしてんのー!」

「ミクお姉さまだけずるいです。私もマスターにぎゅってしたいです」


そういていれば部屋の中へ入ってくるミクと同じボーカロイドのリンとルカ

そんな二人の後ろからやれやれといった風に肩をすくめるKAITOとMEIKO

そして後頭部で手を組んでいるレン

我が家の家族が全員揃ってしまった



「みんな揃っちゃいましたね、マスター」

「そうだねぇ」

「マスター!」

「っと…リン、危ないでしょ?」

「えへへ〜」



みんな揃った事に苦笑していれば、リンが勢いよく私の膝にしがみついてきた

そんなリンに危ないでしょ?という私

そんな中…うずうずしているルカが目に入った



「ルカもおいで」

「は、はいっ」



うずうずしていたルカは私が許可すればそのまま私の腕に抱きついてくる

普段はクールなのに、甘えたいと思うときは小さな子供っぽくなる…そんな性格のルカ

というか、胸で腕を挟むとかどこでそんなの覚えたの、ルカ…



「あはは、マスターは人気者ね〜」

「MEIKO、笑い事じゃないだろ?」

「そういうKAITOも笑ってるじゃない」

「それは、まぁ…」



気まずそうに目をそらしたKAITO

アイス好きながら真面目な彼は必死にこらえていたのだろうか…



「ま、みんな仲良しで良いじゃん」

「そうだね、レン」



にししと笑っていたレンに同意する

我が家はこうして今日も五人のボーカロイドに囲まれて仲良く幸せです







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