翼持ちて奏でる剣と魔法の舞

□旧ベルカ
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旧ベルカ
エンディアス エンフィールド領




戦乱がベルカの国中を覆う中・・・・唯一にして後に最後の平穏の地と呼ばれるエンディアス。
その国を統べるエンフィールド家はその日、少しばかりざわついていた。




「殿下。レオン殿下」

「?あぁ、すまない。もう時間か?」



そんな中、エンフィールド家の城の中の書庫で蔵書を読んでいた青年・・・・次期エンフィールド家当主のアルトリウス・レオン・エンフィールド。
侍女に呼ばれ、蔵書から顔を上げれば苦笑いを浮かべた侍女の姿があった。



「はい。聖王連合のゼーゲブレヒト家からの留学生の方はお着きになられました。殿下ってばそれなのに蔵書を読みふけって」

「あはは・・・・それはすまない」

「いえ。陛下も“どうせ息子の事だから書庫にでも籠っているのだろう”と仰られていましたし」

「父上にはお見通しだったか。・・・・では、僕は中庭に向かうとするよ。そこで会う約束になっているからね」

「分かりました。後でお茶をお持ちいたしますね」




そう言いながら侍女は書庫を後にし、レオンも蔵書を戻した後に書庫を後にした。
今日この日、エンディアスのエンフィールド家には同盟国でもある聖王連合のゼーゲブレヒト家からの留学生がやってくる予定であった。
そしてその留学生はレオンの二歳年下で、歳も近いという事から手紙のやりとりを一往復半しつつ、エンフィールド家に来る時には中庭で会おうと約束をしていたのだ。
そしてレオンが中庭へ足を踏み入れた時・・・・風が吹き、中庭に植えられている桜の大樹の花びらが舞った。
そんな中・・・・



「あれは・・・・」




レオンが見たのは桜の大樹下で佇み、桜を見上げる女性がいた。
その女性へレオンもゆっくりと近づいていく。



「こんにちは」

「っ!えっと・・・・」

「初めまして。エンフィールド家第一王子アルトリウス・レオン・エンフィールドです」

「貴方が・・・・。初めまして。聖王連合ゼーゲブレヒト家より参りました。オリヴィア・ゼーゲブレヒトと申します。よろしくお願いします、アルトリウス殿下」



挨拶を交わし、お互いの名を名乗ったレオンと女性・・・・オリヴィア・ゼーゲブレヒト。
そんな中、レオンの目に留まったのは彼女の瞳。
紅と翠の虹彩異色・・・・それは聖王家の証。
紛れもなく、彼女が手紙のやり取りしていた相手なのだと改めて理解する。




「レオンで構いませんよ。アルトリウスよりも侍女や民の皆もそう呼びますから」

「分かりました。では、レオン殿下」

「では・・・・その殿下というのもやめませんか?手紙のやり取りでも書きましたが、歳も近い事ですし」

「ふふっ・・・・そうですね、ではレオンと。でも、私のこの口調に関しては許してくださいね?それと、レオンも私に対して敬語はなしですよ」

「あぁ、オリヴィア」




これが二人の出会い



後に夫婦となる二人の王族の初めての出会いである





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