翼持ちて奏でる剣と魔法の舞

□To A's編
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深夜…
既に殆どの人が寝静まっている頃…。
風鳴家本邸の庭には一人の影があった。



「……」



それは人類守護防人…風鳴刹那…。
唯一人静かに月を見上げて佇んでいた。



(私は…)



月を見ながら思うのは今日の戦いの時の事…。
シグナムとの戦いの時に起きた頭痛と一気に脳裏を駆け巡った映像…。
それは今までの過去の記憶を夢で見てきたものとは違う程の量の記憶…。



(どうすればいい…。この事は…翼に言うべきなのだろうか…。だが…)



その事から悩みが生まれてしまった。
言うべきか…言わざるべきか…。
だがもし言ったとして…拒絶と言う事すらありえる、と…脳裏に過ぎる。
そうしていればサクッと誰かの足音が刹那の耳に入った。



「っ…!…翼…」

「刹那…」



振り返ればそこに居たのは寝間着用の着物を着て髪を下ろしている翼の姿。
だがその表情はどこか…不安そうだった。



「どうした?」

「……っ」

「!」



不安そうな表情をする翼に、近づく刹那。
だが次の瞬間、翼は刹那の胸に飛び込んだ。
その事に驚きながらも、彼女を抱きとめる事には刹那は成功したが…すぐに気づいた。
彼女が…翼が、震えていた事に。



「翼…」

「空を見ていた刹那が…何処か…遠くに行ってしまう様な気がして…っ」

「……」

「だから…不安で…」



翼が震えていた理由…。
それは月を見ていた刹那が何処か遠くに行ってしまう様な気がしたという不安からで…。
それを聞いた刹那は静かに翼の髪を梳いた。
そして思うのは…今、腕の中にいる彼女が…とても大切だと言う事…。



「翼…私は、どこにも行きはしない…。私達は…互いに剣であり、互いを収める鞘だ」

「うん…」

「……。翼」

「何…?」

「いつか…言いたいことがある。まだ、迷っているが…いつか、叔父様や櫻井女史たちと共に聞いて欲しい」

「?…うん、いいけど…」

「…ありがとう」




そして…



新たな戦場は…



12月のあの日へと…





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