Security Police

□sheer happiness
2ページ/3ページ

"家族"になってからもう何年も経つのに。
ずっと変わらない、仕草。
もうすっかり慣れてはいるけれど。やっぱり、嬉しい。

「ずっと好きだったヤツが奥サンで、こいつらがいて・・・」

わたしの髪を撫でていた海司の手が、すっと耳元をなぞって。
首筋に、触れた。

「こういうの、幸せ。かもな」
「うん」

さりげなく触れた手が、ぐっと肩を引き寄せた。
ふたり座った姿勢で体を寄せ合って。じっと子供たちの寝顔を見つめて・・・
ふと、隣を見上げると・・・

除夜灯が淡く照らすオレンジ色の光の下。
ゆらり、顔が近づき・・・
自然な仕草で、唇が触れ合った。

キスさえ、もう日常の一部。
恋人同士だった頃から比べれば・・・ときめきは薄れているけれど。
でも、こうやって触れ合う仕草は、
瞬時に、胸奥を満たす。

「もっと、シアワセにしてやろうか?」

悪戯を思いついた少年みたいな表情で、愉しそうに囁く海司に、
くすぐったさから身を捩りながらも、
"No"、なんて・・・言うわけ、ない。

「寝室(あっち)」

先に立ち上がった海司が、わたしの手を引っ張って立ち上がらせる。
勢いよく引っ張られて、とん、と胸元に寄りかかるような姿勢になってしまった。

くっついた姿勢のまま、そっと揃って見下ろせば・・・
微動だにせず熟睡している子供たちに、安堵の息が漏れる。

「うん」

子供が寝静まった深夜は・・・"夫婦"の時間。
"パパ"と"ママ"から、"オトコ"と"オンナ"へ。

互いを確かめ合う・・・大事な、一時。



もう一度見つめた後。足音を忍ばせて、そっと離れた。

手を繋いで寝室にすべりこんで。
かちゃり、と内側から鍵をかければ・・・

どちらからともなく、腕を伸ばして抱きしめあって。
そのまま・・・広いベッドに倒れこむ。

邪魔になる衣服を全て取り払って。
互いに、カラダをなぞりあっていく。
二人なりのリズムで。慣れた仕草で。

ゆっくり、熱を分け合って。
溶け合っていく。

肌を重ねてひとつに繋がることさえ、もう"ありふれた日常の一部"だけれど。
言葉の代わりに伝え合う、

『愛してる・・・−−』

今更言葉にするのはちょっと照れるし、勇気がいるけれど。
この胸の内にある気持ちは、きっとずっと変わらないから。

波打つシーツと、動きに連動して軋むベッドのスプリング。

ひそやかに、抑えながら・・・
でも堪えきれずにあがる、甘い吐息混じりの声。

二人欲を出し合った後は、
そのまま。眠りに堕ちて・・・

朝陽が昴れば・・・また始まる、いつもの日常。



なにげない毎日があること。
愛しい存在が今日も隣にいること。

これこそが・・・なによりの、幸せ。



〜Happiness in our ordinary life〜


Fin


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ